子どもと向き合う為
医療の未来も変える

こころと美容のクリニック東京 

医療法人社団先陣会理事長で、児童精神科のオンライン診療を主軸にしている「こころと美容のクリニック東京」の大和行男院長は、精神科診療を概念に含めた新しいプライマリケア医療の医師を育成し、医療関係者の雇用と家族の人生をサポートする活動を行っている。大和院長に、医療への思いを聞いた。

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「一人も見捨てたくない」と医師の道へ

学生時代に教師を目指していた大和院長が医師の道を志したのは、教育実習中のある出来事がきっかけだった。「実習初日に一番話しかけてくれた生徒が、翌日から不登校になってしまったんです。気になって、教職員のミーティングで『生徒に連絡を取りたい』と言ったら、『高校は義務教育じゃないから登校している生徒に向き合え』と言われました。確かにそうだとも思ったのですが、来られなくなった一人を見捨てることはどうしてもできない。そんな自分は教師に向いていないんじゃないかと思い、学校に来られない一人と向き合える児童精神科医の道を目指しました」と振り返る。

学費をためて、受験をし直し、2年後に医学部に入学した。精神科医となり、まずは子どもではなく大人を診察することに。「大人を診られない児童精神科医もいますので、まずは大人を診られるようになろうと思いました。また、当時は東日本大震災の直後で、東北に住んで復興支援をしようという思いもあり、山形の病院に勤めて、福島から避難してきた人のサポートをしました。そして、同時期に非常勤で来ていた児童精神科の著名な先生から児童精神科の外来を学び、その後、精神科専門医と精神保健指定医の資格取得後に関東に戻り、埼玉県の病院で依存症治療の経験を経て、神奈川県の複数の病院で児童精神科に勤めて、『子どものこころ専門医』の資格を取得し、東京・日野市で『豊田こころのクリニック』を開業しました」と語る。

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子どもたちに寄り添う思い

児童精神科医は数が少ない上、精神科の初診は対面診療が必須ということで、日本一のターミナル駅である東京駅の近くにオンライン診療を主軸とした「こころと美容のクリニック東京」を開院。従来の保険診療に加え、「思春期美容皮膚科」として子どもと子育てで疲弊した親の肌のケアや、児童精神科の訪問診療なども実施している。

「子どものことを考えるとメンタルだけでは駄目だということが分かってきて、内科、皮膚科、小児科の勉強を経て、美容も必要だろうと。そんな中、コロナ禍の影響でマスクの下の肌荒れやニキビが気になって学校に行けないという子が多く出てきて、そのストレスを解消するためには悩みの根本原因である肌をケアすることが大事ですので、『思春期美容皮膚科』を始めました。また、クリニックに来られない子を対象にしているのはもちろんですが、対面診療やオンライン診療では診られないことがありますので、そういった部分をケアするためにも訪問診療を始めました。毎日精神をすり減らして子どもを見守っている保護者に少しの時間でも休んでもらえるという側面もあって、とても喜ばれています」と自信を見せる。

さらに、医療従事者の教育と人材紹介を一体化したプロジェクトや、今後全国に普及するであろうオンライン診療を広めるための事業も展開している。大和院長は「地域医療の崩壊に伴って、大量の退職者が出るであろう医師や看護師、医療事務、薬剤師など専門職の適正な再配置を行うための企業間連合の形成を目指しています。また、オンライン診療は有益で広めていくべきものなのですが、診療報酬が非常に安く、なかなか参入する開業医が少ないのが実情なので、オンライン診療でもQOL(クオリティー・オブ・ライフ)は下がらないという研究を学会で発表して、国に診療報酬の底上げを訴えようと思っています」と明かす。

子どもたちのために選んだ場所が、奇しくも海外旅行客の拠り所になっているという。「児童精神科の診療がメインなのですが、当院は『年齢、性別、疾患を問わず診る』というのがポリシーで、都心では予想以上に保険証を持たない海外旅行客や海外実業家の心身不調時に診察に応じてくれる医療機関が少ないので、国籍・人種を問わず、どのような症状でも必ず受け入れる体制にしています。旅行中の方だけでなく、口伝えに当院のことを聞いた患者が診療に来ています」という。

子どものメンタルを救いたいという思いから始まった大和院長の医師の道は、「子どもを救う」という信念はそのままに、診療科目や国籍という垣根を越えるばかりか、医療業界の未来までも改善しようとする大きな道へと拡大している。

こころと美容のクリニック東京 理事長/院長

大和行男

1978年、群馬県出身。2000年に東京大学教育学部卒業後、2年間のサラリーマン生活を経 て新潟大学医学部に入学。卒業後、2010年に東京大学医学部附属病院で初期臨床研修、精 神科病院での後期研修を経て、精神科専門医と「子どものこころ専門医」を取得。2018年 に豊田こころのクリニックを開業し、現在は2023年開業のこころと美容のクリニック東京 院長を務める。

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