雨を地球に帰す物語
新たな舗装材で挑戦

株式会社ヤマチコーポレーション

世界的にも水に恵まれている日本だが、近年では市街化による雨水の浸透量が減少や、集中豪雨による水害などが問題になっている。北海道の建材大手・ヤマチコーポレーションは「雨水を大切にする道」を作ることで、地球の水不足に挑んでいる。同社建材事業部の藤原裕樹マネージャーに同社の取り組みを聞いた。

01

オランダ生まれの舗装材との出会い

日本地下水学会によると、都市部の市街地化でアスファルト舗装や排水路の整備が進み、農村部では減反政策により水田が減り、雨や雪の地下浸透量が大きく減少している。さらに近年では局地的な集中豪雨が多発し、森林の減少による保水量の低下による災害や、都市部で下水道や排水路が水をさばききれずに水があふれだす内水氾濫による水害も問題になっている。

こうした課題がある中、国内外の資材仕入れを担当していた藤原さんは2012年、フランスのバティマ(パリ国際建築専門見本市)で、オランダのベラ社が開発した「グラベルフィクス」というアスファルトやコンクリート舗装の代わりとなる環境建材と出会った。六角形の型がつながったベース素材に砂利を敷き、雨水をそのまま地下に戻すことができる舗装材で、藤原さんは「ヨーロッパでは基本的にアスファルトやコンクリート舗装は好まれません。多少不便でも砂利を敷いただけ、無舗装のまま道路を使っています。そういった無舗装道路でも使いやすいように考案されたもので、人も車、そして水も通りやすい」と説明する。

グラベルフィクスは、六角形の穴が整列するハニカム構造で浸透性はもちろん耐久性にも優れる。、上部と下部の厚みを変えることで、砂利を入れなくても1平方メートル当たり100トンという荷重に耐え、再生ポリプロピレン製でリサイクルも可能なことから、同社が地道な販売を続けた結果、大型バスが停車する観光施設や、公共施設など大規模施設に採用されるようになったという。

藤原さんは「砂利との相性がよく、寺や神社からの引き合いは多い。水戸市の偕楽園では、3年連続で改修工事に導入されています。耐久性だけでなく砂利が流れず歩きやすいというところも、多くの人が訪れる公共施設から評価されています」と語る。

02

8年間の模索の末の新商品

雨水を地下に戻すという課題に取り組んだ同社は2022年1月、タイル舗装ユニット「BEAT BLOCK(ビートブロック)」を発表した。高い透水性と、枠を置いた中にタイルをはめ込んでいくだけという簡易性が特徴の舗装材だ。
藤原さんは「オランダは海抜ゼロ地帯のある国で、雨水を地下に戻すために、いろいろな手を使っている。そうした姿を見ていて、私たちも何かできないかと8年間模索しました」と振り返る。

特にこだわったのが枠の製造だ。ビートブロックは枠とタイルの間から透水するため、微妙な隙間が必要で、それを実現できるパートナー探しには苦労しまたという。そこで自動車用樹脂など国内トップの樹脂加工技術を持つ東邦工業と何度も試作と打ち合わせを重ね、納得の品質にたどり着いた。「枠を並べてはめるだけで、誰でも簡単に施工できる。シンプルなだけに枠の質が大切ですから、いいパートナーに出会えたと思っています」という。
さらに豊富なタイルの種類も魅力で7種の天然石と、木目調など12種類のセラミックから選べる。
藤原さんは「元々弊社は建築資材の卸ろしなので、タイルなどの建材は豊富にあります。、LEDなども取り付けることも可能で、公園や遊歩道、ホテル、美術館などの施設での利用を想定しています。グラベルフィクスとビートブロック、この二つの商材で、雨を地球に帰す物語を伝えていきたいと思います」と力を込めた。

株式会社ヤマチコーポレーション建材事業部全国販売担当マネージャー

藤原裕樹

1977年生まれ、帯広市出身。不動産会社を経て、2000年9月、ヤマチコーポレーション入社。国内外の資材仕入れを担当し、2020年、自身が商品化してきた商材をブランド化。現在、ブランディングから販売管理までをワンストップで行うプレーイングマネジャーを務める。