【大学特集】
考え抜くことを
重んじる「哲学」が原点

東洋大学

白山・赤羽台・朝霞・川越・板倉の五つのキャンパスを構える東洋大学は、1887年(明治20年)に井上円了が創設した「哲学館」を前身とする私立大学である。矢口悦子学長は「徹底的に考え抜くことを重んじること、それが教育の原点」と語る。

01

受け継がれる建学の精神

東洋大学の建学の精神は、「諸学の基礎は哲学にあり」というものです。この精神は、すべての学問において徹底的に考え抜くことを重んじることが教育の原点であると位置づけています。この精神を教員も学生も理解し、各学部に受け継がれています。
 
SDGsを含むさまざまな社会問題に取り組んでいますが、これも建学の精神に根ざした活動です。その精神を、「東洋大学の心」と表現し、他者のために自己を磨き、活動の中で奮闘することを重視しています。創立者である井上円了の教育理念を受け継ぎ、社会の中で困っている人々を支えながら、自己を成長させていくことが、本学の強みであると考えています。

また、スポーツを通じた人材育成にも力を注いでおり、「スポーツを『哲学』し、人と社会と世界をむすぶ。」という理念を掲げ、2023年4月には「TOYOスポーツセンター」を開設し、アスリートの強化だけでなく、人間としてのマネジメントやスポーツを通じた地域貢献など、すべてのスポーツ部門が関わる仕組みを構築しています。スポーツは、単に体を動かすだけでなく、夢を育み、応援し、仲間を得ることで人々を幸福にするものだと考えています。競争の中での勝敗を意識することは避けられませんが、大学スポーツはその枠を超えるものであることを学生たちに伝えています。

02

いつでも頼られる母校でありたい

私は大学を卒業後、学校外の教育に興味を持ち、大学院で若者から大人を対象にした社会教育の研究を行いました。社会教育は、大学進学を選択しなかった人々や、地域社会の若者たちに対して支援する役割を担う学術領域であり、その範囲は学校外のあらゆる活動を包括しています。こうした取り組みや、第二次世界大戦後の自立的な共同学習に興味を持ったことをきっかけとして、地域の若者や大人たちが学ぶための支援をしたいと思い、社会教育の道を志しました。

東洋大学へは、社会教育を専門とする教員の公募を見つけて応募し、文学部の教員として採用されました。学部内のさまざまな活動を通じて文学部長に選ばれ、2期4年務めた後、学長選考委員会に推薦され、2020年4月に学長に就任しました。

今の時代は卒業後、数年のうちに約3分の1の若者が転職しています。つまり、大学で学んだことが終身雇用につながっていないという、ある種の証明になっています。そのような状況だからこそ、何か新しいことを学びたいと思うことが未来にもあるかもしれません。その際には、再び母校を頼りにしてもらいたいです。

私たちは常に社会の変化に対応し、最先端の知識を提供し続ける大学でありたいと考えています。「いつでも戻ってきて、学んでください」という言葉を胸に、学生たちが求める場所でありたいと願っています。将来を見据える皆さんには、新しい可能性や希望を失わないために、さまざまな出会いがある場所を探してほしいと思います。その中で、大学が役に立てば幸いです。
 
社会が急速に変化する中、学生の皆さんが大学で身に付けることだけで一生を送れるという時代は過ぎ去りつつあります。そうした状況だからこそ、前向きにさまざまな人との出会いを求め、周囲の支えを信じて自分自身も努力できる姿勢を、大学生活の中で身につけてほしいです。

東洋大学学長

矢口悦子

1956年生まれ。80年お茶の水女子大学 文教育学部 教育学科卒業。86年同大学院 人間文化研究科 (博士課程)単位取得満期退学。2003年より東洋大学文学部教授。その後、社会貢献センター長、文学部長を経て、2020年から現職。

https://www.toyo.ac.jp/