【大学特集】
誇りに思える大学を目指して

鳥取大学

鳥取砂丘の近くに位置する鳥取大学。中島廣光学長は自身の好きな研究よりも大学運営に力を注ぐプロフェッショナルだ。学長は「鳥取大学に通っていたことを誇りに思ってもらえるような大学にしたい」と語る。

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理念は「知と実践の融合」

鳥取大学は「知と実践の融合」を理念とし、さまざまな教育と研究を行っていますが、特に、体験型の教育に力を注いでいます。例えば海外に行って、自身の弱点や日本が世界でどのような立場にあるのかなど、多岐にわたる理解を深めたり、語学力や日本の知識が不足していて、海外の人に説明できないことなど、新たな気づきを得たりして、次なる学びへのモチベーションにしてもらいます。

また、地域で活躍できる人材の育成を目指す「地域学部」では、地域に足を運び、その地域の実情を体験する実地調査を重視した教育を行っています。

他に類を見ないオンリーワンの研究に積極的に取り組んでおり、代表的なのが乾燥地に関する研究です。鳥取砂丘が広がるこの地では、昔から砂丘に関する研究が盛んに行われており、世界の乾燥地での研究に発展しています。地球の陸地の4割が乾燥地で、世界の人口の35%がそこで生活しています。そんな乾燥地に住む人々の生活向上と産業の発展、世界中の乾燥地の砂漠化防止にも積極的に取り組んでいます。ここでも実際に現地へ足を運び、現地の人に指導を行っています。

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生涯の友や恩師に出会える大学に

私は幼いころから教師になりたいと考えていました。素晴らしい先生に出会い育ててもらったことから、自分も若い人たちを育てたいという思いが強くあったからです。大学生の時、研究室に配属されてからは、研究に没頭しました。頭で考え、黙々と作業をすることが好きで、やり抜く強い意志と責任感を持っていると自負し、研究者としての道が私に向いていると感じました。そのため大学院に進学し研究を続けました。

博士課程修了後、企業の研究者などさまざまな進路がありましたが、教師への憧れが変わらなかったため、教員になることを選びました。関東で生まれ育った私にとって、鳥取大学で働くことは本当に偶然の出会いでした。研究が大好きだった私は、当初は組織の管理よりも一生研究者として過ごすつもりでした。

しかし、ある時、親しい人から頼まれて農学部の副学部長を引き受けることになりました。副学部長となると、研究よりも大学全体のために時間を捧げる必要があります。責任感から、大好きな研究の時間を削り、学部の発展のために尽力しました。そういったことの積み重ねと、周囲の方々の支えのおかげで、今現在、学長に就任することができたのだと思います。

私が掲げる大学方針は以下の三つです。

「学生が成長を実感し、達成感と満足感をもって卒業修了し、鳥取大学で学んでよかったと思ってもらえる大学にしたい」
「学生と教職員を大事にする大学にしたい」
「社会や地域から必要とされる大学にしたい」

 一つ目に関して、学長に就任した年の4月に、ある方から多額の寄付があり、その方の奥様から手書きのお手紙をいただきました。生前に夫が鳥取大学の前身である鳥取農林専門学校で学んだことをとても誇りに思っていたので、寄付が遺志に沿うことだと感じたという内容でした。

 大学は教育機関なので、大学教育の意義や成果を常に問い続けなければいけません。ただ、学生は多感な時期を大学で過ごすので、生涯の友や素晴らしい教員に巡り合い、楽しいことや苦しいことを共有し合いながら濃密な時間を過ごしてほしい。長い人生を考えると、大学生活は短いですが、年を取ってからも楽しく語れる思い出や経験を持てる価値ある大学を築いていきたい。

 また、さまざまなバックグラウンドを持つ学生が在籍しており、このような社会人になってほしいと一概に言うことはできませんが、学生たちには物の見方、考え方を学び、先入観にとらわれず、客観的に物事を考えられる人材を増やしていきたい。そうすれば、この先の日本も良い社会になるのではないでしょうか。

鳥取大学学長

中島 廣光

1953年生まれ。81年東京大学大学院博士課程修了後、鳥取大学農学部助手に。助教授、教授。 農学部副学部長、農学部長、理事・副学長を経て、2019年から現職。

https://www.tottori-u.ac.jp/