ブランディング通じ
歯科医院の魅力発信

厚生労働省の医療施設動態調査によると、2021年１月現在、全国にある歯科医院数は約6万8000で、コンビニエンスストアの約5万6000店舗を大きく上回る。小柳代表は「開院すれば患者が来るという時代は終わり、新規開院でも集患と定着が大きな課題。「マーケティングが施されているコンビニより数が多い時点で、歯科医院の経営はすごく難しい。しかも、小さいころに感じた『怖い』『不安』という印象を持ち続けている人も多く、なかなか足が向かない場所になっている」という。ToothToothは、そのイメージを払しょくするため、歯科医療をもっと身近に感じてもらえるようなイベントや動画配信など、歯科医院に特化したブランディングのサービスを展開している。

その主軸が、オーダーメイド型の内覧会サービスで、見学相談会と呼ばれている新規開院時の内覧会の企画や運営を通して、歯科医院の魅力を戦略的に伝えるものだ。「十人十色をもじって“十院十色”といいますが、医院ごとに治療方針や特色、ターゲットが異なるからこそ、一番魅力が伝わる方法でサポートしています。内覧会に足を運んでもらい、予約を取りたいと思ってもらうためには何が必要なのか、この点を中心に戦略を立てています」という。

同社が手がける内覧会への来場者は3日間で平均200～300人。エリアによっては、1000人を超える場合もあるという。「単にチラシで告知するだけでは、歯科医院のイベントに行ってみようとはなかなか思ってもらえません。そのきっかけの一つとして、似顔絵のプレゼントを行ってきました。子どもや家族の似顔絵は愛着もわきますし、部屋に飾る人も多く、似顔絵を見るたびに、イベントや医院のことを思い出すようになります。歯医者さんに持っていた悪いイメージを、いい思い出に切り替えられる瞬間になります」と話す。

同社では、内覧会への集客はもちろん、そこからいかに予約につなげるかを得意としている。予約数が来場者数の10％を超えれば成功といわれるが、同社の予約率は平均35％だ。小柳代表は「歯科医院は、虫歯など痛みが出たら行く場所、と考える方が多かったのですが、痛くならないように定期的に通うところへと意識が変わりつつあります。虫歯・歯周病・かみ合わせ、この三つが良い状態でキープできていると病気にもつながりにくいので、定期的に通うか、痛くなってから通うかで、医療費にかなりの差が出てきます。内覧会は歯科医療の啓発活動の一環だと考え、医院の魅力だけでなく、予防歯科の重要性を伝える台本を作り、医院のスタッフとも共有し、『歯科医院に通うとこれだけメリットがあるんだ。この医院にすぐに通いたい』と思ってもらうようにしています」と語る。

ほかに、待合室などで配信する院内動画サービスや子供向け集患施策も提供している。「はみがきうさぎ」というキャラクターを制作するなど、「歯科医療をもっともっと魅力的に」を合言葉に、さまざまなブランディング戦略を介して歯科医療の魅力発信をサポートしてきた。「本来であれば歯科医院がやるべきことなのかもしれませんが、口元を大事にすることの大切さ、というものを少しでも伝える役割を担えたらと思っています。根底にあるのは医療なので、エンタメ要素を加えるとしても、そのバランスは大事にしていきたい」と話す。

これまで、同社のサービスの主体は歯科医院の集患で、顧客満足度に軸を置いていたが、小柳代表は「今後は歯科医院の内部や従業員満足度にも目を向けていかなければいけない」と話す。「歯科医院の離職率は意外と高い。医院ごとにハウスルールがあり、マニュアルが普及していないのも理由の一つなので、ハウスルールの部分だけ変更や追加ができるマニュアルアプリを制作して、まもなくローンチする予定です。そうした取り組みで、少しでもスタッフの満足度を上げることが、医院のブランディングにもつながると考えています」と力を込める。