IT派遣の老舗が目論む
新たな経営基盤

東海ビジネスサービス株式会社

1976年の設立当初から、IT技術者の派遣事業を軸に情報処理トータルサービスを展開している東海ビジネスサービス株式会社。2020年に就任した田中亮宇代表は、新たに中小企業をターゲットにしたITコンサルタント事業を立ち上げたほか、社内でも組織変更など改革を実施。新たな経営基盤を作りだしている。

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中小企業のDX化をサポートする新規事業

田中代表が同社の経営に参画するようになったのは、大手コンサルティング企業に勤務していたときの縁がきっかけだった。公認会計士の資格を持っていたこともあり、当時代表だった加藤輝美名誉会長から、定期的に経営相談を受ける間柄になり、請われる形で同社に入社し、新たにITコンサルティング事業を立ち上げた。代表に就任以降は、ITコンサルティング事業と、設立当初から経営基盤を支えてきたIT技術者派遣のSES(システムエンジニアリングサービス)事業の両軸で、経営革新を行っている。

これまで大手企業がクライアントだったSES事業と違い、ITコンサルタント事業は中小企業がターゲットだ。M&AをITの側面で支援する「ITデューデリジェンス業務」と、中小企業のDX化の支援を行う「業務効率化支援業務」。いずれも目的はSES事業で得た多くのITノウハウやエンジニアたちのスキルを、IT関連で課題を感じている中小企業に還元し、事業継続の支援につなげることだが、そこには田中代表のバックグラウンドも大いに関係している。「私は塗料販売店の息子で、いわば中小企業の“小”に近いところをずっと見てきました。そこが原点なので、中小企業をサポートしたいというのが自分のモットー。中小企業の事業継続がなければ日本の発展はありえないと考えています」と、中小企業のDX化をサポートして日本全体のIT化を促進し、社会に貢献しながら、社員の市場価値を高める環境作りを目指す。

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社内の環境や制度改革を業績アップにつなげる

新規事業の立ち上げのみならず、それを支える社員の力を大事にしたいと田中代表は、古い慣習や組織体制、社員の目標設定など社内制度も大きく変えた。「会計士の目線であれば、数字が一番重要になりますが、人材の材は“財力”の“財”だと考えており、人材の価値を高めることが大切だと思う」と社内の組織作りに注力する。「派遣先に出てしまうと、帰属意識が薄くなってしまう」と考え、約270人の全社員と面談し、意見を受け止めながら、今後のビジョンや具体的な施策を伝えている。

また、本社移転で社内環境を改善。給与水準もアップした。エンジニアには目標単価という1人当たりの月額予算を設定したことで、社員が単価概念を持つようになり、就任から2年で個人売り上げのアベレージが10%アップした。田中代表は「IT業界は20代後半から30代が一番スキルも体力もある世代。若手を採用しても、その世代が引き抜かれてしまうと会社としての損失も大きい。彼らがいかに仕事をしたいと思える会社になれるか。そこを考えています」と語る。

ITスキルとヒューマンスキルが同社の付加価値であり、田中代表は「技術だけでなく、人間力で勝負したい」と強調する。「社内のエンジニアと話をすると保守的だなと感じることが多くあります。システムエラーや問題が発生しないように重箱をつつくような作業をすることがエンジニアの仕事なのですが、そこにもっと大局的な目線を持つと仕事の本質をとらえることができる。仕事の価値や顧客のニーズを理解しやすくなるのではないかと考えています。そういったエンジニアを増やすことも、日本全体のDX化の推進につながっていく」と説く。今後はAI化されたシステムと人をつなぐ部分の潤滑油のような人材も必要になるだろうと予想し、今後の未来を見据えた人材育成にも意欲を見せる。

50期を迎える3年後の2025年7月には、現在の1.4倍となる年間売上25億円達成が目標だ。そのためにはエンジニア1人当たりの単価を上げると同時に、さらに社内のヒューマンスキルを上げるため、人材のリーダー育成にも力を入れている。「大局的な目線を持つことにもつながりますが、エンジニアとして一人前でも、管理職になれば予算管理や労務などの知識も必要になってくる」と各種スキル研修を実施している。また、ITコンサルタント事業では、M&A支援を行うITデューデリジェンス業務の認知を広めることも課題だという。田中代表は「企業買収の際に必要な調査のなかでITの部分というのは、ITの知識がないとあいまいになることも多い。現行システムが古く、作り変えなくてはいけないなど、IT周りの情報も、買収する際には必要。その部分を担える企業になりたいですし、M&AではIT調査もセットで実施すべきだという文化を根付かせたい」と話す。情報処理トータルサービスの老舗は、改革を重ねながら新たな一歩を踏み出している。

東海ビジネスサービス株式会社代表取締役社長

田中亮宇

1979年、東京都出身。慶應義塾大学法学部を卒業後、公認会計士の資格を取得。大手コンサルティング企業を経て、2019年に東海ビジネスサービスに入社。2020年に代表取締役社長に就任した。

https://www.tokai-bs.co.jp/