【大学特集】
学問と経験の結びつき

東京都立大学

東京都八王子市にメインキャンパスを構える東京都立大学は、七つの学部を持つ総合大学だ。大橋隆哉学長は「挫折があっても乗り越える過程で知識や洞察力を得ることは、成功よりも貴重だ」と語る。

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文系と理系の融合

東京都立大学は東京都が設置した唯一の総合大学で、人文社会、法、経済経営、理、都市環境、システムデザイン、健康福祉の七つの学部があり、文系から理系まで広範な分野をカバーしています。

 総合大学ならではの文理教養プログラムが特色です。社会で注目されている特定のテーマに基づき文理の枠を超えて体系的に構成された教養科目やゼミナールを学修することで、時代の変化に対して柔軟に対応できる能力を育成しています。

 さらに、副専攻と呼ばれるプログラムを導入しています。学生が所属する学部学科の専門にプラスする形で、体系的に組まれた特定分野の専門科目を履修できるシステムで、数理・データサイエンス、観光マネジメント、人間健康科学、国際の四つのコースがあります。

例えば、数理・データサイエンス副専攻コースでは、データサイエンスの基盤となる数理を学ぶ基礎科目から、テキスト分析、画像・音声処理や機械学習等の応用科目を経て、現実のデータを用いてデータサイエンスの手法により課題解決を目指すPBL科目まで体系的に学修できます。

他にも、国際副専攻コースは優れた英語力が要求されますが、留学が必修で、留学前には英語力、異文化理解力、コミュニケーション力など国際的な視野を持つ上で必要な能力を養い、留学後には学修成果の発表やグループディスカッションを行い、その能力をさらに向上させることで、国際社会の第一線で活躍できるリーダーシップを身に付けることができます。

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豊かな人生への糧

研究力の強化を進めたいと考えています。これまでの日本では、さまざまな製品が開発され世界中で使われるなど、研究力も伸びていましたが、最近はその勢いが見られません。しかし、日本には底力があると信じており、若い世代には非常に期待しています。

学生の皆さんは、今後、急速に変化する社会情勢や新たな課題に対応していく必要がありますが、基礎的な学問の力や研究を通じて得られた経験が将来につながると信じています。大学は人類の知性と好奇心を育む場所であり、他にはないマニアックなテーマも含め、多岐にわたる研究を推進することが大切だと思います。私は本学の学生が伸び伸びと研究できる環境を整えることで、大学をもっと元気にしていきたいと思っています。

若い時は未来を不安に思ったり、何を選ぶべきか分からなくなったりすることがあると思います。しかし、将来にめまぐるしい変化が起きたり、現時点で理解できないことがあったとしても、失敗を恐れず挑戦してほしい。実際、私は実験で成功するまでに何度も失敗を繰り返しました。挫折があっても乗り越える過程で知識や洞察力を得ることは、失敗しないまま成功するよりも貴重な勉強になります。挫折を乗り越えることで、自分の得意分野や興味の対象を見つけ出し、将来の方向性を見い出すことができます。

学問や研究を通じて身に付いた経験やスキルは、より豊かな人生の糧となります。未来に焦りを感じることがあるかもしれませんが、積極的に挑戦することで、本当の意味での成長を得ることができるでしょう。そして、その経験が自分自身を強くし、何が起きても大丈夫という自信につながると信じています。

東京都立大学学長

大橋 隆哉

1981年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。日本学術振興会奨励研究員、英レスター大学研究員、東京大学理学部助手を経て1992年より東京都立大学理学部助教授、1998年同教授に就任。2005年再編・統合の為首都大学東京理学研究科教授となり、2016年学長補佐、2017年副学長を歴任。2021年より現職。専門は宇宙物理学分野。

https://www.tmu.ac.jp/