銀行員から歯科医へ
異色経営者の挑戦

ノイシュタットジャパン株式会社

銀行員から歯科医に転身という異色の経歴を持つノイシュタットジャパン株式会社の鈴木計芳代表。独自の理念に基づく医院経営のほか、歯科診療に用いる機器や器具を開発し、歯科業界の既成概念を変える活動を積極的に行っている。

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労働稼働率を考えた独自理念の医院経営

元々銀行員だった鈴木代表が歯科医を目指したのは、当時朝から夜遅くまで働いていたため、終業後に行ける歯科医がなかったことがきっかけだ。「歯の治療のために3カ月ほど火曜日の午前中だけ休みが欲しいと上司に申し出たら、『辞表を書け』と言われました。『仕事には2種類ある。代わりがいる仕事といない仕事。お前の仕事は代わりのいない仕事だから、3カ月も同じ時間に休みを取るなら辞めてくれ』という理由でした。それなら自分のような会社員が就業前後に行ける歯科医院を作ればいいと思った」と、約6年勤めた銀行を退職して、東京医科歯科大学歯学部に入学した。

卒業後、年中無休で午前9時から午後10時まで治療できるという理想のクリニックを開院した。「今では土日も診療するクリニックが増えてきましたが、20年以上前には珍しかった。でも医療機関というのは本来そうあるべき」と語り、医師を交代制にすることで対応している。午前中だけ勤務や午後5時から10時まで担当する医師もおり、個々に合わせたフレキシブルな働き方を早くから採用していることで、女性の医師も多く、離職率もほぼゼロに近く、自由な雰囲気がスタッフのモチベーションにもつながっているという。「円滑に診療が回っているので、待ち時間も少なく、患者リピート率も99.7%と高い水準を保っています」と労働稼働率を考えた一貫性のある医院経営に自信を見せる。

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俯瞰の目線がイノベーションの源

鈴木代表は、痛みのない治療の実現を目指して、さまざまな医療器具などを独自で開発している。イノベーションの鍵を「一つ目はクレイジーであること、二つめは周りが反対すること、三つめは知財が確保されていて特許が取れるものであること」だと挙げる。中には耳かきから着想した器具もあり、「一瞬クレイジーだと思うかもしれませんが、理論を知れば納得できる。クレイジーだからこそ、歯科医師からは認めたくないと反対意見も出てくる。そういった要素がイノベーションにつながり、新たな治療機器や施術を生み出す」と語る。歯科業界の常識を覆すような治療法や機器を次々と開発している鈴木代表の発想の源は、銀行員時代に叩き込まれた「解決策は必ずある。見つからないのはまだ当事者が見つけられていないだけ」という言葉だという。「思い込みを捨てることが一番重要。実行するまでにさまざまな発想を考えれば、必ず解決策が見つかる」といい、そのためにはさまざまな経験が必要だと力を込める。

「毎日、同じレストランで食事をしていてもアイデアは生まれない。ときにはいいレストランに行って、いつもと違う感覚を得たり、人とのつながりを作ったり。そういった経験がないといい企画も出てこない。木を見て森を見ずといいますが、俯瞰して見ることが別のプランにつながるのではないでしょうか。違う角度から見たら、意外と簡単に解決策は見つかるはず」と語る。

 鈴木代表は「痛みがなく、安心、安全で治療ができるということはもちろん、労働稼働率を考えながら、もっと効率よく技術が習得できる治療法や機器を生み出すべき。今後は歯科医師業界の底上げに加え、歯科医自体のイメージもアップさせたい」と先を見据える。

ノイシュタットジャパン株式会社代表取締役

鈴木計芳

1954年、静岡県出身。京都大学法学部を卒業後、三井銀行に入社。退職後に、東京医科歯科大学歯学部に入学。2000年に自身が院長を務めるクリニックを開院。その後、計17の分院を開設し、それらをグループ化した医療法人社団 松伯会を発足。2018年にノイシュタットジャパン株式会社を実体化。

https://www.neustadtjapan.com/