予防を中心にした
次世代の歯科経営を

医療法人社団しん治歯科医院

香川県高松市にある「しん治歯科医院」は、健康な人が訪れる歯科医院をコンセプトに1990年の開業当時から予防歯科に注力し、保険診療による予防歯科をベースにした次世代の歯科経営「デンタルフィットネス」を展開。定期健診に年間1万4000人が訪れている、「全国の歯科医院にデンタルフィットネスを広めたい」という高橋翔太COOに聞いた。

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30年のノウハウから生まれた「デンタルフィットネス」

近年、政府が毎年の歯科健診を義務づける「国民皆歯科健診制度」の検討を始めるなど、予防歯科への注目が高まっているが、予防歯科という概念がまだあまり浸透していなかった約30年前の開院当初から、しん治歯科医院は保険診療による予防歯科を中心にした医院作りに注力してきた。

他業種を経験してきた高橋COOが経営に参画する際、「歯医者を会社に」をキーワードにした。「歯科業界に入って、会社組織になっていないクリニックが多いと感じた。顧客満足度を追求するがゆえに、現場に負荷がかかっている。それが経営上の問題だと考え、従業員満足度と顧客満足度を同時に上げる仕組みを実行しました」と振り返る。

父の高橋伸治院長が開院当初から作り上げてきた予防歯科の診療ノウハウと、高橋COOが実践した経営改革により、医院の売り上げ増加に成功した。高橋COOは、予防歯科で患者のリピート率を高め、利益を最大化する次世代の歯科経営法を「デンタルフィットネス」と名付け、全国の歯科医院に導入を支援するコンサルティング事業も手がけてている。当初はコンサルティングは考えていなかったが、知人の歯科医院に自分たちの手法を試してもらったところ、短期間で経営が改善したことをきっかけに、横展開を始めた。約1年をかけて導入の支援をしているが、五月雨式に契約を受けるのではなく3カ月に1度募集枠を設定し、複数医院に同時に受講してもらっている。高橋COOは「学習塾における夏期講習みたいなもので、一番効果が出やすいスタイル」だと語る。

高橋COOは、「デンタルフィットネス」のメリットとして、「経営が安定すること。スタッフや歯科衛生士が辞めにくくなること。国民の健康レベルを底上げできること。三方良しのビジネスが作れるのが強み。成功事例も多数あり、再現性の高さも特徴です」と胸を張る。

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口腔ケアが当たり前の世の中に

今後の歯科業界を経営の観点から見る高橋COOは「予防歯科は今まで歯科医院に来ていなかった人たちをターゲットにできる。しかも、治療はいつか終わるが、予防歯科には終わりがないく、需要は延々と続くので、今後の歯科業界はバラ色」と語り、「各都道府県に必ず1医院、デンタルフィットネスを導入しているクリニックがある状況を作りたい」と将来を見据える。

また、歯科衛生士不足が問題になっているが、デンタルフィットネスを導入している歯科医院は離職率が非常に低いという。高橋COOは「歯科衛生士になりたいと思ってもらえないのは、歯科業界に夢を持てないのが原因」だと分析。デンタルフィットネスが導入されている歯科医院で働きたい、という歯科衛生士が増えれば、導入せざるを得ないという状況を作りたいという。

一般企業を経験した高橋COOは、歯科業界と患者側、両方の感覚を持っているからこそ、その架け橋になりたい、と語る。「最近は、むし歯の患者が減っていますが、実は歯周病が進行しているケースも多々あります。予防医療を軸にしたデンタルフィットネスを導入する医院を増やし、患者の意識を高めて、日本でも口腔ケアが当たり前の世の中になっていくように力になりたい」と意欲を燃やす。

開院当初から「健康な人が訪れる歯科医院」をテーマにしているしん治歯科医院から生まれた「デンタルフィットネス」は、香川から全国へと広がっていく。

医療法人社団しん治歯科医院COO

高橋翔太

1982年、徳島県出身。平成19年、高知工科大学大学院卒業後、IT企業や証券会社を経て、東京で広告代理店など複数の会社を起業。平成27年、父の高橋伸治院長が開業した「しん治歯科医院」の経営に事務長として参画。経営改革を行う。現在、歯科業界専門のコンサルタント事業も手がける。

http://www.shinji-shika.jp/