若者×馬で地域活性
廃校再生で学び場に

株式会社SBMplus

2022年春、千葉県山武市の廃校を舞台に、高校生と馬を主役とした新たな学び場づくりが始動した。このプロジェクトを率いるのが、SBMplusの鈴木光代・代表取締役CEOだ。ビルメンテナンス事業のノウハウと、新事業を次々と軌道に乗せた手腕を生かし、社会貢献のフェーズへと新たな一歩を踏み出す。鈴木代表の新たな挑戦に、地域からも大きな期待が寄せられている。

01

「社会貢献」を新事業に

鈴木代表は2013年、夫の後を継いで創業50年超の歴史を持つスズキビルメインテナンスの代表取締役に就いた。それを機に社名をSBMplusに変更し、新たな経営の柱となる新事業の立ち上げに着手した。環境製品や、健康、コスメ、ペット製品の開発販売、海外事業コンサルティングといった数々の事業を育てる中で、次のステップとして見据えていたのが「社会貢献」だった。

鈴木代表は 「これまでは、第一に社員のため、会社のために必死に走り続けてきました。自社ブランド構築や海外販路開拓など、自分の『やりたい』もかなえました。そこで次に考えたのは、『会社として社会に何を残していけるか』でした。新たな事業は、自社の存在意義をかけて、社会に還元できるものにしたいと思ったのです」と明かす。

そこで注目したのが、近年増えている”空き公共施設”だ。祖業であるビルメンテナンスのノウハウを生かし、地域活性化に貢献したいと、動物向けのサプリメント開発の際に知己を得た、競馬・乗馬の引退馬牧場等を運営する「馬事学院」とのコラボレーションを企画した。馬の魅力で、空き公共施設を人の集まる場として再生しようと考えたのだ。

首都圏エリアで適地を探すと、山武市の旧日向小学校跡地活用の公募案件が飛び込んできた。当初は馬を生かしたグランピング施設を構想していたが、現地説明会に参加してその考えは大きく覆された。2021年3月に閉校したばかりで、建物も設備もきれいで、校舎も広く、水道も電気もすぐ使える状態だったので、グランピングでは到底生かし切れないと思ったのだ。非常に状態の良いこの施設を十分に活用するため、鈴木代表はすぐに隣の八街市にある馬事学院に向かい、野口佳槻代表と話した。野口代表は「学校をやりましょう」』と提案。馬事学院は、馬の世話をしながら学べる「東関東馬事高等学院」という学校も運営しており、施設の老朽化等でまさに移転を本格的に検討しているタイミングだった。鈴木代表は、その場で構想をまとめ、種々の調査や書類作成など一気に進め、提案をまとめた。そして見事コンペを通過、優先交渉権者となった。

02

あきらめなければ、すべてがつながる

東関東馬事高等学院は全寮制で、生徒が3年間寝食を共にしながら、一人一人が担当する馬を持ち、その世話やトレーニングをメーンのカリキュラムとしているユニークな学校だ。鈴木代表は「他にはない、生きた教育をしている学校です。馬を通して、生徒たちは3年間で大きく成長します。実際に学校に行くと、生徒たちは生き生きとした声であいさつをしているし、自分の馬について話す時の目の輝きは、本当に素晴らしい」と語る。

移転プロジェクトでは、既存の校舎を生かしつつ、牧場や厩舎、馬術大会が開催できる本格的な馬場を造営する予定だ。学校の規模が大きくなることで、引退馬として殺処分される馬をより多く救うこともできるようになる。また、JR日向駅から徒歩10分という立地を生かし、通学生の受け入れも検討している。「既存の学校教育になじめない子どもたちを受け入れて、週2、3日でも、馬に会うのを楽しみに来てくれればいいと思う。高卒資格が取得できるので、普通の学校に通えない子供たちに、希望を持ってもらえるような場所にできれば」という。

ただ、少なくない数の馬を扱うことから、騒音や臭いなどが地域住民に懸念されるのではないかと不安だった。鈴木代表は「地域住民向け説明会が正直恐ろしかった」と明かすが、、ふたを開けてみれば、学校の理念に共感し、若者たちがやってくることを歓迎してくれたという。山武市も、地域の雇用創出や馬術大会の開催などによる地域活性化に期待している。

ビルメンテナンス事業の承継、サプリメント等の自社ブランド開発、海外展開など、はこれまでに数多くのチャレンジを続けてきた鈴木代表は「もし、一つでもあきらめていたことがあれば、今の私はありません。無我夢中で続けてきたことすべてが、今回のプロジェクトにつながっていまです」と語る。

「社会に残していける事業を」という強い思いで、廃校を再生し、若者と馬が生き生きと過ごすオンリーワンの学校運営を実現した。その学びの場の魅力に引かれ、多くの人が集い、地域が元気になっていく。そんなビジョンの実現に向けて、鈴木代表とSBMplusは進んでいる。

※取材協力
千葉県山武市 総合政策部 企画政策課
内山晴夫課長、 土屋勇副主幹、 安田俊平主任主事

株式会社SBMplus代表取締役 CEO

鈴木光代

1961年、栃木県出身。秘書勤務、広告代理店などを経て、株式会社リクルートで「とらばーゆ」編集企画室勤務。契約エディターとして独立後、1993年、スズキビルメンテナンス株式会社入社。2013年6月、代表取締役に就任。社名を株式会社SBMplusに変更。環境関連商品の企画・販売などの新事業を展開している。

https://sbmplus.co.jp/