がんの早期発見と
予防が医療費削減に

医療法人栄町消化器・内視鏡内科クリニック

超高齢化社会を迎えた日本では、医療費の増加も大きな問題と言える。札幌市にある栄町消化器・内視鏡内科クリニックの佐藤龍理事長は、薬剤の適切な処方などで経済効果を意識した診療を行ってきた。がんの早期発見、予防は健康寿命を延ばすだけでなく、医療費削減につながるともいう佐藤理事長に話を聞いた。

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充実した検査機器で十分な診察と適切な処方を

消化器内科を専門に、年間約2200件の内視鏡検査を扱う中、医療費削減を目指した佐藤理事長がまず力を入れたのは、薬の処方だ。高齢になり、複数のクリニックに通う患者の中には20個近く薬を服用する人も多く、処方された薬が原因で他の症状を引き起こし、薬が追加される多剤投与も問題となっている。「長年、消化器を診ている経験やエビデンス重視の臨床に加え、一般内科も診ているので、糖尿病からの腹痛といった判断もできるのが自分の強み。とりあえず胃薬で痛みを抑えるのではなく、十分な診察をし、吟味して適切な薬を処方するよう心がけています。その中には後発品で代替できるものもありますし、医療費の薬代も抑えられる」と説く。

 充実した検査機器がそろっていることも重要なファクターだという。「普通のクリニックだと難しい生化学を含めた院内採血、レントゲン、超音波検査など大きな病院と同等の検査ができますから、総合的に診断が可能。すい臓や肝臓、腎臓の数値も測れるので、急性すい炎や胆石なども即日診断でフィードバックできる。外科で診るような急性虫垂炎も通院で済むケースも多い」と話す。

「何よりも医療費の削減につながるのが早期発見、早期治療」だと佐藤理事長は力説する。日本人の2人に1人ががんになる時代といわれる中、実際にがんを患った場合には治療や手術で高額な医療費がかかってしまう。「内視鏡で早期のがんやポリープを見つけ、その段階で切除すれば、進行しないわけですから、早期発見、治療は寿命を延ばすだけでなく、将来的な医療費も安くなるので、日々の診察の中で、病気にならない指導を心がけています」という。それには内視鏡検査の診断力も鍵になるといい、「大腸がんの原因の多くがポリープといわれ、それを発見できるよう特殊光やAIを導入して、診断精度を上げるよう努めています。さまざまな技術を使い、少しでも早期発見ができて、無駄な治療がなくなるように力を入れています」と説明する。

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「患者の人生を楽しく」啓発活動にも注力

コロナ禍では、感染への不安から全国的に健康診断や定期的な内視鏡検査を回避する人が多かったことから、最近は進行がんで見つかる割合が増加傾向にあると指摘する。「胃がんや大腸がんは早期発見すれば95%以上完治する。それも多くは内視鏡で治療が可能であり、臓器を温存することもできる。ですが、進行がんで発見された場合、転移があると平均寿命が短くなり、外科的手術で切除ができても、抗がん剤治療が必要になる。高額な医療費を回避するためにも、定期的な検査は重要です」と強調する。

 さらに、佐藤理事長は講演会を通しての啓発活動にも注力する。「開業すると依頼講演を受ける医師が少ないのですが、自分は年に3~4回ほど忙しいなかでも準備をして臨んでいます。新たな情報も皆さんに知っていただきたいと思い、自分でも勉強する機会になっていますし、ひいては治療にフィードバックされると考えています」という。

「患者の人生を楽しくしたい。病は気から、ではないですが気の持ちようによって絶対に変わってくる」という佐藤理事長は、患者とのコミュニケーションにも心を砕く。「コロナ禍では自宅に引きこもっていたせいか、患者さんから運動不足やうつの傾向になってしまったという声を多く聞きました。実は大腸がんの予防には運動も大事。動かないことで肥満や糖尿病も増えてくる。そうなるとまた医療費がかさみ、医療費問題はさらに厳しくなってくるのではないか」と懸念する。

 早期発見と治療、そして予防が健康寿命だけでなく、医療費削減につながる。その思いを患者への臨床に反映し、一般内科の診察では生活指導にも力を入れる佐藤理事長は「人の健康寿命が延びれば、その分働き手も増えますし、医療費を減らせるだけでなく、日本の経済が多少なりとも豊かになっていくはず。そこに一役買えるような診療を行っていきたい」と力を込める。

医療法人栄町消化器・内視鏡内科クリニック理事長

佐藤 龍

1975年、新潟県新潟市出身。1999年に旭川医科大学を卒業後、同附属病院を始め複数の病院で地域医療、救急医療に携わり、旧琴似ロイヤル病院、名寄市立総合病院では消化器内科の立ち上げに従事。札幌東徳洲会病院を経て、2017年4月栄町消化器・内視鏡内科クリニックを開院。

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