健康は口内環境から
予防の大切さを発信

宮本院長は2007年、埼玉県志木市に幸町歯科口腔外科医院を開業した。「ホンマでっか!?TV」（フジテレビ系）をはじめ、「あさイチ」（NHK）、「スッキリ」（日本テレビ系）など多くのメディアで歯科医療の情報を発信している。そんな宮本院長は幼いころ、学習机すら与えられず、高校時代の成績は最下位だった。「歯科医師になれば、オープンカーに乗って遊び回れるかもしれない」と夢見て、歯科医を目指したという。「今でこそ、歯科医療の大切さを発信したい、皆さんのお手伝いしたいといった思いが一番ですが、当時は自分のことばかり。振り返ると、”濡れ手で泡作戦”でした。不純な動機だったと思いますが、その方がバイタリティーを出せることもあるんだと実感しています」と苦笑する。

歯学部を卒業後、あごの関節について研究を深めるため、地元でもある石川県立中央病院の歯科口腔外科に入った。論文を書くのがライフワークになっていたという宮本院長は、オーストラリアのアデレード大学教授と論文を共著したことをきっかけに留学し、研究に没頭した。「大学卒業から約20年、歯科医師としては折り返し地点で、病院にも勤めたし、留学もしたし、大学で教員も務めたし、論文もたくさん書いた。やり残したことはなんだろうと考えたら、開業だと思い、幸町歯科口腔外科医院を開院することになりました」と振り返る。

開業後は広報活動をせず、口コミで患者を増やし、数年後には医局の後輩がドクターとして加入。年商約３億円と上位１％の規模の歯科クリニックに成長させた。「恩師との出会いから、『世に尽くすこと』『人に尽くすこと』を学び、それを常に意識しながら患者に向き合ってきました。その信念は、スタッフとも共有しています。1日100人を診察したら、自分にとっては一人の患者さんは100分の１かもしれないけど、患者さんにとって自分は唯一無二の存在。スタッフには『一人一人の患者に心を注ぎ、おいしいものを噛めるようになりたいのか、白い歯にしたいのか、それぞれの希望にあわせて、その人に届く話をしてほしい。口の中を診るだけでなく、患者さんの過去や未来を見ましょう』とお願いしています。もう一つ成長の要因を挙げるとするなら、受付、衛生士、技工士とそれぞれの目標と役割分担を明確にし、治療の入り口から終了まで流れがしっかりとできる『チーム医療』を実践したことだと思います」と語る。

宮本院長は今後のクリニックについて、「時代を見ながら、本質をとらえて成長し続ける組織でありたい」という。歯科医療業界全体としては「より予防に注力する流れになっていくはず」という。「口内環境が悪いと、認知症やがんなど全身100種類以上の病気の発症と進行にも悪い影響があるといわれるため、近年は歯科医療の価値が上がっています。政府の経済財政運営の指針となる『骨太の方針』に『国民皆歯科健診』の方針が盛り込まれたことからも分かる通り、治療よりも予防が大事な時代になってきている。口の中と体の健康が密接に関係しているので、口の中のメンテナンスには終わりがない。そうなると、メンテナンスのための歯科衛生士不足も課題になっていく」と指摘する。

また、1人の歯科医師として最大の願いは「患者さんの幸せ」だという。「幸せ＝お金と思う側面がありがちですが、健康でなければ意味がない。健康のベースになるのが口の中の健康です。自分は歯科医療のことをメディアなどでいろいろと発信していますが、難しいことを言ってもなかなか気付いてもらえない。一人一人が口の中のことに関心を持ってもらえるように、もっと分かりやすく、興味のあることに絡めた話をしていきたい。これからの歯科医院は、予防のための活動をして、『患者さんの幸せ』の足元を固めるが仕事だと考えています」と言い切る。

これからもメディアなどを通して「生活を豊かにするような健康情報を楽しく伝えていきたい」という宮本院長。歯科医としての確固たる信念を胸に、今後も人々の健康を支えていく。