技術力は継承し、
新たな挑戦を続ける

𠮷川鐵工株式会社

溶接や接着剤、ネジ・ボルトなどを使用せずに、部品を接合させる「カシメ作業」を自動化させるリベッティングマシンの専業メーカーである𠮷川鐵工株式会社。4代目となる𠮷川晃平代表は「“つなげる”をキーワードに、つなぐ技術のプロフェッショナルになりたい」と語る。

01

繁栄のための挑戦と改革

同社のリベッティングマシンは電子機器から自動車部品、建具、家電、医療機器、日用品など幅広い分野で活用されている。𠮷川代表は「我々の技術は溶接やボルト締めなど他の方法に比べ、タクトタイムの削減、品質の安定化、熟練作業者への依存度の低下、教育コストの削減など多くの利点があります」と胸を張る。

創業は、𠮷川代表の祖父が始めた自宅兼鉄工所だった。手作業だったカシメ加工を「もっときれいに、もっと早く、もっと楽にできないか」という視点でリベッティングマシンを開発。「加工するリベットは材質、形状、サイズは様々で何万種類とあり、顧客の要望に応えてマシンをカスタムメイドしていくのが当たり前だった」という。カシメ加工を含む全工程を自動化する装置を設計開発し、生産性向上をサポートしながら業績を上げてきた。

𠮷川代表は2016年、祖父の死去に伴い「小さいころから会社を継ぐと祖父に伝えていたのに、実際に働いている姿を見せられなかったことが唯一の心残り」と畑違いの銀行員から転身し、同社に入社した。新卒で銀行に入社したのも、もともとは「いずれ会社の経営に携わるなら、財務に強く、多くの経営者と会話ができる銀行がいいだろう」という考えがあったという。

銀行マン時代は、東京駅に近い支店で中小企業を担当後、中堅・大企業の営業担当に。「当初は挫折ばかりでしたが、新規営業先の獲得ランキングでトップを取った後から、周りの見る目が変わったことを覚えています。厳しい環境だったからこそ挑戦しがいがありました。大阪では債権回収なども経験し、『できないことはない。やるかやらないかだ』と思えるようになりました」と、その経験が今も糧になっている。

「ただ経営するのではなく、より良い会社にさせるために継ぐという使命感を持っていた」といい、入社当時は「ニッチトップであるゆえ、経営が順調に推移してきた事もあり、会社全体の危機感が薄かった。チャレンジする、変化しなければならないという意識が希薄でした」と振り返る。技術力やお客様の期待を超えていく姿勢は残すべきではあるが、一方で昔ながらのやり方をずっと続けていてはいけないと組織改革を実行し、その後自ら父に社長交代を打診した。人事評価制度の導入し、当初は混乱したが、「全部署のミーティングに私が参加し、課題を一つずつ丁寧に説明していくことで、目標は社員を無理させるものではなく、ベクトルを一つにするために設定しているコミュニケーションツールだと社員の理解が深まりました」と語る。

幼いころから工場に出入りしていた𠮷川代表にとっては顔なじみの社員も多かった。この先何十年も自身が経営していく上で必要な改革のため、厳しいことは全部自分から言う、と実行してきました。前職時代に得た『行動を伴うと周りの見た目が変わる』という原体験を元に、まずは自分が動くことが大事だと考えました」と強い決意で改革を進めてきたという。

02

接合技術のカシメから「つなげる」をキーワードに

人事評価制度の導入や外部からの人材採用のほか、IT化や業務の仕組み化に取り組んだ結果、社員のコミュニケーションが改善。経営効率も大幅に向上した。「全ては社員が活き活きと誇りを持って働いて欲しい、それが一番の願いです」と𠮷川代表はいう。

「リベッティングマシンは飽和状態であり、カシメ加工が必要なところには行きわたっていると昔の社員は言います。ですが、やはりいまだにカシメ加工なんて聞いたこともない人の方が多い。ボルト、ネジ止めといった他の接合方法からカシメに変えるという選択肢もあるでしょうし、まだまだ需要はある。カシメ加工に限らず、多くの工程を自動化できる弊社の技術なら、自動化による生産性向上だけでなく、製造業においての少子高齢化による人手不足の解消という社会的な意義も達成できる」と言い、カシメの技術と自動化の技術を展開することで日本だけではなく、世界のものづくりを持続可能なものにしたいと意気込む。

また、近年は学生向けのイベントやオープンファクトリーに参加。自社の魅力を再発見してもらうことはもちろん、イベントに向けて社員が一丸となることが部署間のコミュニケーションにもなっている。

「カシメは物と物をつなげる技術。その“つなげる”をキーワードに、つなぐ技術のプロフェッショナルになりたい。カシメ以外でも『つなぐ(接合)に関する相談ならヨシカワへ』となるように多岐にわたる産業、製品とつながっていきたい」という𠮷川代表。祖父や父から受け継いだ技術をもとにさらなる「接合のプロ」を目指す。

𠮷川鐵工株式会社代表取締役社長

𠮷川晃平

2010年、同志社大学商学部を卒業後、みずほ銀行に入社。2016年に祖父が築いた𠮷川鐵工株式会社に入社。2023年5月から現職。

http://www.riveting-mcn.co.jp/