時代のテーマは老化
薬事特化のコンサル

株式会社RCTジャパン

疾患への治療効果やアンチエイジングが期待できる新成分など、化粧品や健康食品は日々進化し続けているが、販売、広告において薬機法や景表法に頭を悩ませているという企業も少なくない。そうしたヘルスケア商品の薬事案件に特化したコンサルティングを行うRCTジャパンの持田騎一郎代表取締役社長は「次の時代のテーマは老化。アンチエイジングをきちんと伝えることが、この先の自分の仕事だ」と語る。

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CM制作の経験を生かす

持田社長は2014年にRCTジャパンを立ち上げるまで、ラジオ番組のプロデューサーなど20年近くマスコミで番組制作に携わっていた。。その頃、CM制作で薬事考査に関わった経験を持つ。「おなかの調子を整えるヨーグルトのCMを作った時、広告代理店の指示通り制作したのに『薬事法違反だと思う』といわれ、東京都の薬務課に確認すると、『便通改善』というフレーズが指摘されたので、その言葉の代わりにトイレで水が流れる効果音を使ったんです。薬事法を回避するために効果音を使ったというのが業界で話題になって、民放連のCM奨励賞をいただきました」と胸を張る。

苦肉の策が評価されたが、どんな表記や対応ならOKになるのか、薬機法のジャッジには専門家がいない世界だと気付いた。それをきっかけに起業し、現在月間100社以上の化粧品や健康食品、医療機器の薬事案件のコンサルティングを担当している。

「効能や効果を言わないと消費者は買ってくれません。ですが、そのベネフィットを伝えようとすると薬機法が関係してくるので、それを回避するため、例えばヨーグルトだったら、その乳酸菌が京都の伝統的な漬物から発見されたことなど、まず商品の背景にあるストーリーを伝えるようにしています。ラジオ番組のプロデューサー時代に短い言葉で魅力を伝えることを毎日やっていたので、経験から消費者の心を捕まえる経験が生きていると思います」と語る。

また、ラジオ番組のネタ探しで、さまざまな企業のプレスリリースを毎日読んでいた持田社長は、マスコミに情報を伝えるには、一般向けの広告ではなく、プレスリリースが有効なことに目を付け、「薬事プレスリリース・サービス」に取り組んでいる。「薬機法などはBtoCに関わる法律で、メディアに情報提供する分には基本的に関係がない。どのように掲載、放送するかは各メディアの判断で、今までの経験からマスコミに取り上げてもらえるプレスリリースの書き方も分かっているので、それを応用した形でサポートしています」という。

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少し“ズラす”マーケティング

持田社長は、同社の事業を「ヘルスケアビジネスに関わる商品を正しく消費者に伝えるためのサポートビジネス」といい、既存商品についてのコンサルはもちろん、商品開発やビジネススキームの提案にも取り組んでいる。「ラジオ番組と同じで、広告でもプレスリリースでも、時代に寄り添い、そのうえで、少し“ズラす”ことが大事。ど真ん中ストレートがいいときもありますが、それが通用しないときはズラす。マーケティングと一緒。例えば、昔から多くの商品があるニキビの化粧品のようなレッドオーシャンの場合、あごニキビや背中ニキビといった形で、部位×ニキビで限定する。定番の顔からズラすことで市場がある。正面玄関からではなく、バックドアから行く方がいいときもある。そういったことを常に意識しています」と解説する。

設立から約8年、「割とインポッシブルなミッションも、どうにかできるかなと思えるようになってきた」と自信を見せる持田社長だが、「明確な今後のビジョンはない」という。「自分は、来たものを打つというスタンスです。お客様へのコンサルで新しい発見や出会いがあって、思いもよらないところから事業が起きるというケースが多いので、それぞれのお客様としっかりと向き合うだけです」と語る。

そんな持田社長が、次のテーマとして注力しているのが“老化”だ。老化細胞を除去するという医薬品「セノリティクス」が世界的に話題となる中、持田社長は新たに「セノリティクス製薬」を設立した。「これまではアンチエイジング、つまり老化に抗うという手法でしたが、今は一歩進んで老化は治療が可能かもしれない、という時代になりました。セノリティクスをキーワードに、老化関連の商材をBtoBの形で販売したいと考えています」という。

そのほか、化粧品分野で注目を集めているヒト幹細胞培養液の培養工場の創設にも関わっている。「ヒト幹細胞培養液を使った製品の中には、実を言うとインチキ商品も多く、そうしたものをなくすためにも、ちゃんとしたものを提供する必要があると考えています。老化やアンチエイジングについて、しっかりと正しいことを伝えるのが次の10年に向けた自分の仕事です」と力を込める。

ヘルスケアビジネスの分野のみならず、アフリカのマーケットに着目した会社を立ち上げるなど、幅広く事業を展開している持田社長。「お客様の悩みを解決しているうちに広がってしまった」という言葉通り、今後も新たな視点で一歩先を進んでいくのだろう。

株式会社RCTジャパン代表取締役社長

持田騎一郎

1962年、東京都出身。一橋大学法学部を卒業後、日本IBMに入社。その後、ラジオやテレビのディレクターやプロデューサーを経て2014年、株式会社RCTジャパンを設立。ヘルスケア商品の薬事案件コンサルティングや、スポーツドーピングの分析業務など幅広く事業を展開している。

https://www.rctjapan.org/