【大学特集】
令和の日本型学校教育を
けん引していく学校へ

大阪教育大学

2022年に就任した大阪教育大学の岡本幾子学長は「令和の日本型学校教育を大切にしつつ、学生たちには教育の未来に貢献できる人材として育ってほしい」と語る。

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教員養成だけではない魅力

大阪教育大学は、2024年に創基150周年を迎えました。1874(明治7)年に教員伝習所としてその歴史をスタートさせ、現在は、大阪府柏原市の金剛生駒紀泉国定公園内の柏原キャンパスと、大阪市内の天王寺キャンパスの2カ所で展開しています。さらに、初等・中等教育並びに特別支援教育に対応した11の附属学校園を、天王寺地区、池田地区、平野地区の3地区に設置しています。

教育協働学科を持つ教員養成大学という点で、他の国立教員養成大学とは異なった特徴を持っています。教員養成課程とほぼ同じ規模で、必ずしも教員免許を取得しなくても卒業が可能な教育協働学科は、教師として学校教育に携わる人材を育成するほか、一般企業やNPO、行政機関などに就職する場合も、教育大学で学んだ経験を生かしてチーム学校の一員として学校教育を支援することができる人材の育成を目指しています。

また、2022年3月には文部科学大臣から教員養成フラッグシップ大学に指定され、現在「令和の日本型学校教育」をけん引していく大学として、さまざまな取り組みを進め、多種多様な教育課題に応えることができる教育人材の育成に注力しています。本学が位置する大阪は、貧困や特別な支援を必要とする子どもたち、日本語を母語としない子どもたちの教育に関する要望が大きいとされている地域です。言わば大阪は「日本の教育課題の縮図」であると考えています。「ダイバーシティー大阪の諸課題に応え、学習者の学びに寄り添う教師の育成」というミッションの下、教育人材の養成・研修に取り組んでいます。

学生だけでなく、学び続ける教員(現職教員)の教育も支援をしています。5~10分のマイクロラーニングを取り入れた、先導的なオンライン研修プラットフォーム「OZONE-EDU」で、いつでもだれでも受講することができます。普段忙しい教員が通勤・移動中などの隙間時間を利用して、少ない負担で学び続けることが可能です。

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若い時代の経験で世の中に還元できる人材へ

私は、学生時代に、今で言うインターンシップの経験をしました。大学3年生の時に天然染料に興味があることをゼミの先生に相談したところ、京都にある植物染料店へ紹介状を書いてくれました。その紹介状だけを携えて、飛び込みで訪問したことがきっかけとなり、貴重な経験をすることができました。当時、突然の訪問にもかかわらず、温かく迎えてもらったことを、今でも心から感謝しています。染色実験用の布、天然染料、媒染剤などを自由に使わせてもらい、さらに社員食堂で昼食をごちそうになりながら、1カ月ほど過ごしたことが、自分にとっては夢のような経験であり、大切な思い出です。

私が通っていた大学には、当時は大学院がありませんでした。もっと学びを深めたいという思いから、大阪市立大学大学院生活科学研究科に進学しました。この頃、スキーにも熱中していましたので、スキーに、勉学にと充実した院生生活を楽しんでいたところ、大阪教育大学で助手の募集があり、大学院を修了した時点で、大阪教育大学の助手として採用されました。教育学部や教員養成大学には文系、理系、スポーツ、音楽、美術と、さまざまな専門分野の先生がいます。私は、勤めるならそうした多様な専門の先生方が同じ学部で教育や研究をしている環境で働きたいと考えていました。

このような経験を経た自分が、これから教員として教壇に立つ人たちに向けて伝えたいことは、「ボーダレスなグローバル化が進展し、社会とその要素は、多様化、複雑化、複層化の一途をたどる中で、教員養成フラッグシップ大学がけん引する“令和の日本型学校教育”に真摯に向き合い、日本はもとより国際社会に貢献できる人材として育ってほしい」ということです。予測不可能で変化が激しい社会において、的確かつ適切な対応能力を身に付けることが大切だと思います。そのためには世界情勢を知り、世界の中での日本の立ち位置も知っておく必要があります。若いみなさんには、将来の新たな課題や社会の変化に対応できる確かな洞察力と構想力、そして実行力を備えた人材になってもらいたいと思っています。

そして、「失敗を恐れないで」と伝えたいです。近頃の学生さんは、失敗しないことが正解と考える傾向があるように見受けられますが、若いうちの失敗は決して無駄ではないと思います。自身が教員だった頃、実験の授業で失敗した学生に「良い経験をしたと思います。学校現場で同じ失敗をしないようにみんなでその原因を共有しましょう」と伝えていました。若い時代は二度と巡って来ません。その貴重な時期を、自我の確立と自己実現のために有効に過ごしてもらえるよう期待しています。

大阪教育大学学長

岡本幾子

広島県出身。広島県立広島女子大学家政学部被服学科卒業、大阪市立大学大学院生活科学研究科博士後期課程単位取得満期退学。大阪教育大学教育学部助手、助教授、教授、学長補佐、副学長、附属図書館長、理事を経て、大阪教育大学学長に就任。

https://osaka-kyoiku.ac.jp/