オンライン診療で
患者も医師も救う

株式会社オンラインドクター.com

オンラインドクター.comが運営するオンライン診療システム「イシャチョク」は、オンライン診療を導入する医療機関と受診を希望する患者を自動でマッチングさせるプラットフォームだ。予約なしで受診できるのが特徴で、現役の小児科医でもある鈴木幹啓代表取締役は「コロナ禍で苦境に立たされた医師にもメリットがある」と語る。鈴木代表が見据える医療機関の未来とは――。

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予約不要、仮想待合室で待つだけ

オンライン診療は、元々山間部や離島など遠隔地での活用を見込んでいたものだが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、自宅療養での診察や感染リスクを恐れての来院控えなどを背景に需要が高まった。「イシャチョク」は、患者が30分圏内か全国かを選択すると、オンライン診察が可能な医師を自動でマッチングするシステムだ。鈴木代表は「オンライン診療ができる医療機関を探して予約できるサイトはあるが、『イシャチョク』は“予約不要”で、患者はサイト内の仮想待合室『オンライン診療待合室』で待機すれば、順番に診療を受けられる。病気は急に起こることが多いので、予約をするよりも今すぐに受診したいというニーズが高い。まずは、そこに応えました」と語る。

また、オンライン診療は医師側にもメリットがあるといい、「どこのクリニックでも同じ悩みを抱えているのではないか、と思ったんです。コロナ禍が始まった2020年、小児科や耳鼻科では平均で30%近く利益が減少したというデータもあり、経営が困難になった医療機関も少なくない。『イシャチョク』のシステムなら、感染リスクを避けたいという患者のニーズと、経営を維持したいという医療機関のニーズの双方に応えられる」と華っす。

過去の病歴などを事前にアップロードして、受診歴のないクリニックでの受診も可能で、診察を行う。「コロナ禍でニーズが高まった一方で、オンライン診療を導入している医療機関は全体の1割程度。オンライン診療が普及しない要因の一つは、医療診療報酬の違いです。対面診療の方が高いので、そこからオンラインへと患者を回すと減収になってしまう。『イシャチョク』は対面診療で手が空いた時間にアクセスしてもらい、仮想待合室で待っている患者がいれば診るフローなので、点数が低くてもプラスになる。対面に加えてオンラインで新規患者を診察できるので、医師にとっても利益しかないと思います」と強調する。

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患者のニーズを追求した医療DXを

鈴木代表は「どこにいても予約なしで診療が受けられるという利点は、有事の際のインフラにもつながるはずだと感じています」とシステムの可能性を語り、「高い患者ニーズに応えるためにも、全国の医師に参加してほしい」とアピールする。今後の課題は、サービスの認知だといい、「我々はベンチャー企業ですから、大企業のようにマーケティング費用が潤沢にあるわけではありません。未来の医療の形の一つになる『イシャチョク』というビジネスアイデアの賛同者が増えるよう、ベンチャーキャピタルなどに働きかけていくことも課題です」と話す。

また、「今後はオンラインで解決する問題であればオンラインで対応するという社会に変わっていくと思うので、もちろん対面診療は必ず必要なものですが、対面診療が99%を占めるというような現状から、少しずつオンライン診療の比率が増えていくと見込んでいます。対面診療を否定するのではなく、違うツールがあり、そこに患者のニーズもある。そこに気付きながらも行動に移していない医師が多いというところにジレンマを感じています」と明かす。

「患者のニーズを徹底的に追求する」という鈴木代表は、ヘルステック企業として、オンライン診療と併せて患者の情報を取得できるウェアラブルデバイスの開発も予定している。その志は、医療DXの先にある未来へとつながっている。

株式会社オンラインドクター.com代表取締役

鈴木幹啓

1975年、三重県出身。自治医科大学を卒業後、2010年に和歌山県新宮市に「すずきこどもクリニック」を開院。デジタル戦略などを活用し、介護事業や不動産業など複数の事業も展開。2020年、株式会社オンラインドクター.comを設立。日本で一番忙しい小児科医と呼ばれる。日本小児科学会認定小児科専門医。

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