【大学特集】
実学を通じた実装力の育成

東京農業大学

東京都世田谷区、神奈川県厚木市、北海道網走市に三つのキャンパスを持つ東京農業大学。キノコの研究の第一人者でもある江口文陽は、「大学は実学を通じた実装力を育てる場」と大学で学ぶことの意義を語る。

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農業から水産業まで幅広い学問領域

東京農業大学には、幅広い学問領域を網羅した特色のある学科があります。メインは作物を育てることに関する学問で、農業から水産業まで多岐にわたります。これにより、作物の生産から加工、流通、販売までの食品産業における知識とスキルを身につけることができます。さらに、食品科学や、化粧品、香水など、食品と美容に関連した学科もあり、体の内外から美しさを追求することができます。

農業を学ぶ上で最も重要な要素の一つは心理学です。心理学を理解しなければ、製品を効果的に販売することは難しく、人の気持ちを理解し、コミュニケーションを築くスキルは育ちません。本学の学生は自身の努力や作物を育てることで、人との関わり方も学び、主体性やリーダーシップ、問題解決能力、目標を実現する方法を学んでいきます。これが本学の大きな特徴の一つです。

また、地域との深い関わりがあり、水田作りのプロジェクトや地域ボランティア活動などを行っています。こうした活動を強化し、自主性を大切に育くみ、地域の人々に愛される、自発的なプロジェクトを通じて社会に貢献しています。

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キノコに魅了された半生

私が17歳〜18歳の時に父親がガンになりました。手術後は、放射線や抗がん剤などの治療をするものであると思っていましたが、医師はキノコでできた薬を投与すると言いました。キノコなんかが本当に効くのかと思い、キノコについて詳しく調べてみようと思ったのが研究のきっかけです。

キノコから健康食品、医薬品が作られていることを知り、さらにキノコを食べると免疫力が高まったり、体の中からきれいにしてくれることも分かりました。そこからきのこをもっと知りたいと思い、キノコに魅了され、東京農業大学に進学する決断をしました。研究者としてのキャリアを追求する中で、子どもたちの教育と次世代の人材育成の重要性に気づきました。

大学進学を目指す際、目的意識が明確でない人が多い印象を受けます。大学で受ける教育は、単なる机上の学問だけでなく、実践的な経験を通じて人生の基盤を築くものです。大学生活は、何を体験し、それが将来にどのように役立つかについて考える重要な時期で、大学での4年間で培った経験やスキルは、将来のキャリアに大いに役立つでしょう。

また、大学教育は実学を通じた実装力を育て、人々の生活に関わる問題に対処するための力を養う場でもあります。大学は社会に送り出される準備期間であり、将来の挑戦に備える場だと思っています。

大学生も社会の一員であり、お金を受け取ることはプロとしての証と言えます。
一度でもお金を受け取れば、プロとしての責任を負うことになります。社会で最高のパフォーマンスを発揮し、利益を上げるために、自身のフィロソフィーとプロ意識を持つことが大切です。言われたことをただ受け入れるのではなく、なぜその人からその言葉をもらったのかを考え、それを生かし切る能力を身につけることが大切です。

心の余裕を持ち、他人への配慮や思いやりを持つことが、心豊かな社会を築く鍵です。自分自身が心豊かであることで、社会においても他人を尊重し、協力して共に成長する担い手になれるでしょう。社会に出ていく若者たちがプロ意識を持ち、心豊かな社会を築く一員として活躍することを期待しています。

東京農業大学学長

江口文陽

1965年群馬県生まれ。1988年東京農業大学農学部林学科(現:森林総合科学科)を卒業。27歳で東京農業大学からキノコの育種技術で博士号を取得。2012年、東京農大教授。2021年から現職。

https://www.nodai.ac.jp/