高付加価値物流で
業界の活性化を

武蔵通商・フェイバリットグループ

資材、燃料の高騰や深刻な人手不足などの課題を抱える物流業界で、付加価値の高いサービスを提供する武蔵通商・フェイバリットグループ。業界内で強み・特長を持った圧倒的存在感のある企業を目指して事業を拡大している。澤田仁代表は、物流業界のネガティブなイメージの払しょくを目指し、業界の底上げと活性化に注力する。

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物流の2024年問題を解決するために

新型コロナウイルスの感染拡大でエッセンシャルワーカーとして注目された物流業界だが、好調なのは個人向け配送で、企業間物流など全体の荷量は減少し、過当競争が起きているという。澤田代表は「付加価値のない会社は、いかに値段を下げて営業するしかなく、疲弊していく。労働者も、仕事量に見合う賃金を払ってもらえない」と指摘。東京商工リサーチによると、ドライバー不足や燃料の高騰などで、2022年上半期の運送業界の倒産は162件(対前年比42%増)と急増している。

さらに、2024年4月からトラック働き方改革関連の法改正で、ドライバーの時間外労働に対する上限規制が適用され、ドライバーの労働時間が削減される。ドライバーの労働環境は改善されるが、走行距離に応じて運行手当が支給されるドライバーは収入が減少し、運送業者は人件費が増加し、利益が減る「2024年問題」が大きな課題となっている。

澤田代表は「元々物流業界に興味を持つ人が少ない中で、ますます働き手が減ってしまう。若いスタッフやドライバーを確保するためにどうすればいいのかが業界全体の深刻な問題と危惧する。同社では、生産性の向上と職場環境の整備がこの問題克服の鍵とみる。精密機器や美術品などデリケートな荷物を扱う物流と、医薬品など高い品質管理が求められる物流の二つを軸にして、付加価値のある生産性の高い物流会社として業績を伸ばし、雇用を増やしてきた。澤田代表は「単純な物流ではなく、プラスアルファでどういったサービスを提供できるかを考え、業界の魅力を発信していくべき」と力説する。

澤田代表は、社員の継続的な採用と定着を図るには他業界と遜色ない職場環境の整備が必要だと考え、物流会社では東京都で初となるホワイト企業認定や、健康経営優良企業ブライト500の認定を取得し、職場環境の整備にも注力し雇用強化の体制を構築してきた。

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人を介さないと成り立たない高付加価値物流の醍醐味

ニッチな分野をターゲットに高い付加価値を付けることで成長を続けてきたが、グループ各社でも、高度流通加工業や太陽光事業など個性的な物流事業を展開している。澤田代表は「他の物流会社にはない魅力を持っている親和性のある企業なら、M&Aはもちろん、タッグを組んで事業領域を広げ事業の多角化も図っていきたい」と話す。さらに「付加価値のあるサービスを提供するためには、目利きやコミュニケーション能力、スキル、知識などが必要不可欠なので、定期的な勉強会や品質会議を実施しています。独立した品質管理部門があるのも当グループの大きな特徴。顧客からじかに感謝の声をいただくこともあり、そこに働きがいを感じるという若手社員も多い」と語る。

澤田代表は、今までにないサービスを創造していくことに力を入れており、「美術品を扱う中で絵画を梱包するキットの説明動画を公開したところ、美大を受験する学生の保護者から相談があったり、才能があるのに埋もれていく美大生の話を聞いたりします。絵画をただ梱包して運んだり、保管したりするだけでなく、作品を発信する場の提供やアートとビジネスを結び付けるなど関連する問題のサポートにも手を広げていきたい」と語る。

AIやロボットなどを使う物流倉庫も増えているが、高価で繊細な対応が必要な品物は人を介さないとできない物流もあり、澤田代表は「我々の仕事には、感性と2つのソウゾウリョク(想像力・創造力)が必要と常々発信している。AIやロボットだけでは難しい、人間がいないと成り立たないような職場で働く意義や醍醐味を感じてほしい。物流業界は思った以上に幅広い分野で奥深く、頭と身体双方を駆使する人間らしさが求められる面白い業界だということを常に訴えていきたい。そのために会社として事業の幹をもっと太くすることはもちろん、待遇や福利厚生を含め、他業種と比較しても見劣りしないような職場にすること。それが物流業界を変える第一歩だと思います」と業界の活性化に向けて挑戦を続けていく。

武蔵通商・フェイバリットグループ代表取締役

澤田仁

1965年、東京都出身。1988年、大手都市銀行に入行。2001年、父が創業した武蔵通商株式会社に入社。2007年、株式会社フェイバリットを創業。薬事対応倉庫を用意し、医薬品や医療機器、化粧品などメディカル関連の3PL事業と物流センターの運営を展開。2011年、武蔵通商株式会社代表取締役に就任。現在グループ6社の代表を務める。

https://musashit.co.jp/