デンタルドック進め
予防医療の担い手に

足立優歯科

神戸市にある足立優歯科は、生涯にわたり自分の歯を使い続けることを目標に「予防管理を中心とした歯科医療サービス」を提供するクリニックだ。足立優院長は「予防は自分の歯の現状を知ることから始まる」と、歯の人間ドック「デンタルドック」に注力、医師と連携した予防医療を推進する。

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「対処療法ではなく根本療法」

足立院長は、従来の歯科医院との違いを「対処療法ではなく根本療法」だと説明する。「元々歯科医療は、修理が中心。穴が開いてしまった歯をどう詰めるか、どう修理するかがメインですが、原因を見つけて、取り除くという治療が大事。歯はあごの関節から筋肉まで全部そろって一つの臓器なので、そこをきれいに整えて、今後歯が悪くならないようなお手伝いをするのが予防型総合医療です」という。

さらに、 “患者中心の医療”を行っているのも大きな特徴だ。医師が治療方針を説明して患者に納得させるという進め方ではなく、患者自身が自分の状態を正しく理解し、なりたい自分になるためにどういう選択肢があるかを患者が学び、選択する。それをベースに「患者中心の医療に基づく予防型総合歯科医療」に取り組んでいる。

その一つとして、歯の人間ドック「デンタルドック」にも注力する。通常、検査といえば病気を診断するためのものだが、デンタルドックは口の中の状態を患者自身が理解するための検査だ。「多くの歯科医院は治療の説明はするけど、なぜそうなったか、ということに関しては説明をしない。デンタルドックでは、口の中を検査し、その状態になった背景や、これ以上悪くしないためにはどうすべきか、その原因を見つけて、よりよい治療法を提案します。原因を解消すれば、歯はそれ以上悪くならない」と説く。

足立院長は、同じように予防医療に向き合う医師と連携し、歯が悪くならないことだけに着目するのではなく、体全体の健康を考えるようになったという。「通常の医療は対処療法で、血圧が上がったら下げるという治療をしますが、そもそも血圧が上がらないようにするにはどういう生活改善をすべきか、といったことは教えてくれない。予防医療をしようと考えると、実は歯科がすごく重要になってくる」と語る。

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歯科医が予防医療の最初の担い手に

足立院長は、予防医療を推進する「一般社団法人健康マイスター協会」を2021年に設立し、共同代表理事を務める。同協会は、医療従事者が持っている情報をどう伝えていくかを目的に、健康に関する知識を持った人を“健康マイスター”として認定。医学的な背景を持った知識で、健康になるためのサポートを行ってもらう、という教育活動を展開する。

足立院長は「健康のためにスポーツクラブに行ったり、健康食品を買ったりする人も少なくない。そうしたニーズに対して働きかけを行うような企業など、周辺の分野にビジネスチャンスがある。本当に健康であるためには、医学的な背景をベースに、体のことを理解できる情報を知る方が得ではないか。医学的なことは医療従事者でないと提供ができないので、健康マイスターを通して私たちが世の中のニーズに応えていくとは非常に有益だ」と話す。同協会では、健康マイスターが産業医と社員との懸け橋になったり、宿泊施設で食のサポートをしたり。自分の状態を入力することで健康行動のアドバイスが送られてくるアプリなどの開発を予定しているという。

また、予防医療は毎年膨らみ続けている医療費の削減にもつながるともいう。「予防に注目すれば、病気になる人が減るでしょうし、その分医療費や保険料も少なくなる。その意味でも、予防医療は今後本当に必要とされる。医療者の立場から正しい情報を提供できるプラットフォームも必要ですが、歯科にはメンテナンスや検診で定期的に通う仕組みがあるので、自分の歯の状態に向き合う機会を提供し、予防医療を展開したい。歯科医が予防医療の最初の担い手になりたい」と力を込める。

足立優歯科院長

足立優

1960年生まれ。大阪歯科大学卒業後、勤務医を経て米国留学し、1989年に足立優歯科を開設。患者中心の医療に基づく予防型総合歯科医療を展開。社会に対しての啓蒙活動と歯科医療界に対しての教育活動を行っている。「一般社団法人健康マイスター協会」共同代表理事。

http://www.kyousei-kobe.jp/