地域を活性化する
空き家活用サービス

株式会社ジェクトワン

所有者が持て余している空き家を借り受け、地域ニーズに合わせたリノベーションを行い、転借する空き家活用サービス「アキサポ」を展開しているジェクトワン。「世の中の意識を変え、地域を活性化するきっかけになれば」と語る大河幹男代表に社会課題となっている空き家問題について聞いた。

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所有者の負担ゼロでバリューアップ

空き家対策特別措置法が施行された2015年当時、大河代表は、不動産会社が手がける空き家管理や所有者向けの相談やセミナーなどが、空き家の減少にはつながらないものが多いと感じていた。「不動産会社として、空き家という社会問題を解決するためには何ができるだろうかと考えていました。設立7年目で、既存の事業が熟成してきたタイミングで、新事業を立ち上げたい、という思いもありました」と、2016年に空き家活用事業の「アキサポ」を開始した。

「アキサポ」は、所有者の自己負担ゼロで空き家をリノベーションし、定期借家契約を交わして賃貸収入が得られるようになり、契約終了後にはバリューアップした物件が返却される。所有者にはメリットの大きなサービスで、不動産会社にはリスクが高く、社内の反対の声も大きかったという。「土地を購入しないので銀行からの融資は見込めず、自己資金を使うため、既存の不動産事業に影響を与える可能性が高かった」と語る大河代表だが、そんな状況でもあきらめなかった。「当時は空き家率が約13%。将来的には30%近くなるといわれ、それだけマーケットが大きくなるのに、ビジネスが成り立たないことはない。空き家率が30%を超えた自治体は財政破綻するといわれていたので、そんな大きな社会問題に手が打てない不動産会社ではダメだと思いました」と振り返る。

サービス開始直後は「見向きもされなかった」というが、NPO法人を作ってセミナーを開いたり、行政を通じて情報を発信したりという地道な活動が実を結び、現在では年間3,000件ほどの問い合わせが寄せられるようになった。2021年には全国からのお問い合わせに応えるため、サービスの全国展開もスタートした。更にこれまでの実績が認められ、空き家事業において銀行の融資も受けられるようになったという。

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培った企画力で住宅以外に転用

「アキサポ」の特徴は、多くが住宅ではなく、シェアオフィスや宿泊施設、バイクガレージなどの非住宅物件へ転用するリノベーションであることだ。近隣にヒアリングを行い、最適なコンバージョンを企画、提案する。大河代表は「人口が減少している時代に住宅を増やしても意味がない。住宅以外の価値を提供することが、時代に対応していくことになるのでは、と考えています。元々住宅だけでなく、オフィスや店舗、ホテルなどマルチカテゴリーでの開発スキームを持っており、そこで培った企画力が『アキサポ』にも生かされています」と語る。

一つのカテゴリーに注力するデベロッパーが多いが、「その土地にあったものづくり」を理念に、事業を展開する同社にとって、「アキサポ」はその根幹に関わる事業だという。大河代表は「仕事って『あきない(商い)』と言いますが、“飽きない”でやり続けるためには変化が必要。『アキサポ』単体だと、そこまで利益が出ているわけでないですが、新たなアイデアが生まれ、事業としては伸びている。会社や社員のモチベーションにもつながっている」と胸を張る。

空き家活用事業のリーディングカンパニーを目指すのはもちろんだが、最終的な目標は「アキサポ」によって空き家が減少すること。大河代表は「当社は空き家の活用という面で注目されていますが、これをきっかけに空き家をどうするのか、意識を変えてもらいたい。空き家率を減少させていくことは地域の活性化、日本経済の発展にもつながるはず」と将来を見据える。同社は行政や他業種との協業にも積極的に取り組み、空き家問題の解決に向け、「アキサポ」の輪を広げていく。

株式会社ジェクトワン代表取締役

大河幹男

1965年、三重県出身。大手デベロッパーを経て、2009年に株式会社ジェクトワンを創業。マルチカテゴリーの不動産事業を展開する中、2016年から空き家活用サービス「アキサポ」をスタート。

https://jectone.jp/