小さな会社の経営を
オンラインで支援

板山さんが「小さな会社のためのオンライン税理士事務所」を標榜するまでには、さまざまな紆余曲折があったという。税理士事務所に勤務しながら税理士を目指していた板山さんは、最後の1科目になかなか合格できず、自分の時間を作るために一般企業の経理に転職。「次の試験にスムーズに合格できたら、一か八か開業してみよう」と臨んだ試験に合格し、個人事務所を開業した。だが、顧問先は紹介からの数人のみで、経理の仕事をフルタイムで続けながら、夜間と土日だけの税理士業だったため、ほとんど利益が出ない状態が続いた。

そこで、会計資料を郵送せずにスマホアプリで撮影するだけで決算申告ができる「スマホ税務会計システム」を独自で開発し、税務相談もチャットやウェブB会議ツールで対応するオンライン専門のシステムなら、低い顧問料でも利益が出るはずだと考えた。さらに、マーケティングの勉強会に参加し、キャッチコピーがなければ集客につながらないということを学び、「土日夜間対応可能なフリーランスのための税理士事務所」をキャッチコピーにして、顧問先が増え、開業１年後には月商100万円を達成した。「実のところ、 土日夜間“しか”対応ができなかったのですが、そこをあえて売りにしたわけです」と振り返る。

こうして税理士業に専念し、事業合併で税理士法人を設立したが、特色だったオンライン対応や完全ペーパーレスといった仕組みが機能しなかったため、再び自分の個人事務所を開業した。オンライン対応に加え、経営に必要な情報をオンラインで提供する税理士事務所」を目指して、経営コンサルタントとしての情報発信にも注力している。「クライアントの中心は従業員5人以下の小さな会社で、経営コンサルタントが付いていることはほぼなく、情報源が税理士に限られてしまうケースも少なくなかった。税理士は経営のプロではないため、節税以外の部分に関しては自分の勘と経験を頼らざるを得ないのですが、自分は経営コンサルタントとしての知識があったので、役立つ情報を提供して、その道しるべになっていきたいと考えました」と語る。

オンラインセミナーやメールマガジンを使って経営戦略や税務関係、マーケティングについての情報を発信、提供している板山さんは「小さい会社の経営者は自分の経験を糧に戦略を考えていくことが多く、もったいないなと思うことがよくあります。伝統的な戦略が有効なときもありますから、まずは基礎となる情報を知って成果につながりやすい行動をしてほしいと思っています。自分のように税務を通じて経営も教えられる税理士は少ないはずなので、情報源の一つとして自分を使ってもらえたら十分です」という。

また、その考えの根本には「経営者、従業員の自立を支援する」という同社の経営理念も大きく影響している。「何でもかんでも税理士に聞いたらいい、というわけではなく、経営者本人が自分でも数字を見られるようにすれば、経営戦略についてもイメージしやすくなります。サポートするスタンスではなく、伴走のような形で、お互いに自立する中で一緒に稼げるのが理想ですね」と話す。

開業以来、オンライン専門という特色を打ち出して業績を上げてきたが、コロナ禍の経て、「当時以上に差別化が必要な時代」だという。「何もかもオンラインでできるようになった結果、お客様から選ばれるにはどうしたらいいのか、をより考えていく時代になっていると感じています。当社も『従業員5人以下の小さな会社のためのオンライン専門の税理士事務所』と、ターゲットをあえて絞ることで、小さい会社の経営者が選びやすい状況を作り出しています。今後も、。自分にしかない価値を突き詰めて、差別化していく時代が来ると思うので、経営者だけでなく従業員もそれを考えていく必要があるでしょう」と展望する。

今後も、オンライン専門のシステムや税務を通じた経営サポートといった同社ならではの強みを極めていきたいといい、「自分自身も小さい会社だからこそ、その中のお手本になりたい」と意気込む。