和食で免疫力向上
健康の質を満たす食

株式会社 春義

長引くコロナ禍で、自身の健康や自己免疫への関心が高まり、「春義」が運営する日本料理店「海山邸」グループでは『対コロナウイルス免疫向上会席』と名付けた新メニューの提供を始めた。統括総料理長を務める渡辺康博代表取締役は「健康の質を満たすための食が重要視される」と語る。

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料理人に必要なのは覚悟と人間性

福岡の料理屋の息子として生まれた渡辺代表は11歳のときから料理人を目指した修業が始まった。「幼いころから店で出すものと同じ新鮮な魚や旬のものを食べていたので、友だちと外食をしてもおいしく感じない。なぜだろうと興味を持ったのが始まりでした。育った環境に一番大きな影響を受けたと思います」という。

高校を卒業後、老舗の「吉兆」に入社。さらに“流れ板”として全国各地の料亭を渡り歩いて修行を重ねた。さまざまな店舗での経験は、調理法などの技術はもちろん、経営手法も学べた。地元に戻って別の会社で総料理長から副社長にまで昇りつめたが、突然社長が失踪。当時の従業員を全て引き受ける形で2016年。「春義」を設立した。現在、福岡で「海山邸」グループなど計7店舗を運営している。統括総料理長も務める渡辺代表は「自分が料理人からスタートしたので、従業員にも同じ思いを持ってほしい」と語る。

「板前の世界は年功序列でもなく、終身雇用でもない腕一本の実力社会」という渡辺代表は、自らが修行を積んだ「吉兆」の創業者・湯木貞一氏の「工夫して心くだくる思いには、花鳥風月、みな料理なり」という言葉を、ずっと胸に刻んできた。。「最初は何も持っていないので、板前には『この世界で食べていく』という覚悟が必要。そして、最終的には、きちんと筋を通す人間性が求められる。どんなに素晴らしい料理を作っても人間性が伴わなかったら評価は得られない」と指導しているという。

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おいしいだけでなくプラスアルファのある料理を

新型コロナウイルス感染拡大で飲食店の営業休止が続いたが、渡辺代表は「食を通じて社会貢献したい」という思いを強くしたという。「修業時代から日本料理に加え、薬学や栄養学を学び、福岡市の食育パネラーに呼ばれたり、講演の講師を務めたりしています。日本料理に関わるものとして、その知識と経験を生かして、食べる人の健康を第一に考えた料理を提供する必要がある、と改めて感じました」と語る。

その人に合わせた正しい栄養素を採るとため、医師と管理栄養士と共同で、「対コロナウイルス免疫向上会席」という、今までになかった日本料理を開発した。「1食では意味がないように思えますが、『免疫力を上げるために、こういう食事を普段からしてみてくださいね』という提案も込めたメニューになっています。腸内環境を整えるためのデータや栄養素の増減など、半年ほどかけて分析して開発したものです。新型コロナウイルスに対しても有益なので、食を通して免疫力の向上を一生懸命提案する店が一つくらいはあってもいいと思います。この会席では塩分を一切使っていないのもポイントで、最先端の料理を福岡から発信し、全国に広がっていけばいいと思います」と力を込める。

コロナ禍の社会を「間違いなく、今はどの業界においても変革期」という渡辺代表は「変革期というのは、一度に多くのことが起こりがちです。我々の業界でもおいしいだけではなくプラスアルファが求められるのではないでしょうか。我々が提供している会席も、おいしいだけではなく、塩分がゼロ、免疫力を上げる効果が期待できるという要素があります。腹を満たすのではなく、健康の質を満たす料理。そういった時代に合わせたプラスアルファの料理が、この先残っていくと思います」と語る。

先人たちが作り上げた日本料理の普及とともに、それをアレンジしながら「今、存在しない料理を明日作らなきゃいけない」と意気込む渡辺代表。今後も、伝統を守りながら時代にあわせた新たな料理道を切り開いていく。

株式会社 春義代表取締役

渡辺康博

1968年福岡県出身。11歳から料理人を目指し、高校卒業後、大阪の料亭「八光」をはじめ、全国各地の料亭を”流れ板”として渡り歩いて修行を積み、2001年に株式会社吉兆に入社。2016年に地元福岡で株式会社春義を設立し、代表取締役、統括総料理長に就任。

https://www.kaizantei-group.com/