三⽅よしの医療で
⽇本⼀の診療所に

医療法人仁永会ふくなが皮膚科

滋賀県にある「ふくなが皮膚科」は、皮膚科専門医の福永真未理事長をはじめ、スタッフ全員が女性で「患者さん・地域・スタッフの三⽅よし」をモットーに、「⽇本⼀の診療所」を目指している。「良質な医療を提供し、地域医療の在り方を変えたい」という福永理事長に思いを聞いた。

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分かりやすい説明と実践したくなる医療を

福永理事長は勤務医時代を「大きな病院で患者に提供する医療は、医療のほんの一部分でしかないことに気づけていなかった」と自戒する。地域の診療所に押し寄せるたくさんの患者は、わずかな診察の間に納得のいく説明を得られず、ただ処方された薬を持て余し、医療にあきらめを感じていく。「患者が何に困っていて、何を求めているのかを理解した上で適切な治療方針を提案できれば、医師と患者の信頼関係が成立し、治療を継続していくことができる」と思いながら、理想と現実の間で葛藤する日々を送っていたという。

「地域の医療機関の現状と患者の医療に対する期待には隔たりがあり、その結果医療の質が低下しているという現実を見てきた」と指摘する。そんな地域医療の現状は自身の理想でありポリシーでもある「分かりやすい説明と実践したくなる医療」とはかけ離れていたため、自問自答を繰り返した結果、「理想とするものがないのであれば自分が作ればいいんだと思い、挑戦するにはある程度の体力も必要なので、少しでも早い方がいい」と2022年、ふくなが皮膚科をスタッフ5人で開業した。現在スタッフは14人になり、「事業が拡大してから人を増やすのではなく、人が増えることで化学反応が生まれ、さまざまな方向性を広げていける」と手応えを感じている。

理想とする診療所を開くだけでなく、質の高い地域医療と志を未来へつなげていきたいという福永理事長は、「医師が独り善がりになって、属人的な医療を提供していては実現できない」といい、基盤となる理念やミッションだけでなく、日常の細かな決まりごと、接遇の指針などを記した「ふくながBOOK」を作成、それを元にした独自のシステムを構築した。さらに、問題の対処や業務の改善のために、常にスタッフ全員でブラッシュアップしているという。

また、女性の活躍や地方都市での看護師・医療事務の待遇を改善したい福永理事長は、「5年以内の給料倍増計画」と、「完全個人別働き方制度」を確立し、自分らしく、尊厳をもって働き続けられる環境整備に尽力している。給与水準を上げるために、「新たな仕事を生み出す必要があるが、新たにクリニック増やすだけでなく、他のクリニックへの研修へ出向くなど、それぞれができることが増やす」ことでそれを可能にするという。

そして“朝活”の一環として、一日の始まりに大音量で音楽をかけながら掃除をすることで、“心と体の準備運動”を行い、朝礼や毎月の院内外の講師による研修会では、スタッフそれぞれが持ち回りで発表する時間を設けている。「“人前で話す力・聴く力・時間を意識する力”が身に付くことで、接遇力が高まる」とスタッフの成長の場を提供。医療以外でも、PCスキル向上のための研修や英会話を学ぶための研修費を負担し、スキルアップの後押ししている。「何か一つのことで一つの成果を期待するのではなく、一つの行動で多方向への成長を促したい」と話す。

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同志を増やし、日本の医療も変える

新たな試みとして、同じ志を持って独立開業を目指す医師を対象とした“寺子屋・のれん分け制度”を始め、2023年度には同院のスタイルを踏襲した医療機関が3件開業する予定だ。「全国各地に“日本一の診療所”ができることを目指しています。“患者さん・地域・スタッフの三方よし”で、医療と地方の未来を本気で変え、5年以内にはムーブメントを起こしたい」と熱く語る。

「今後の医療業界は厳しい時代に入る。人が集まらなければ収支が成り立たなくなるので、地域の診療所にも変化が求められる」と指摘する。「コロナ禍でオンライン診療の規制が緩和され大企業が絶大なマーケティング力を持って医療に参入してくる時代に、生き残っていくため、選ばれていくためには、独自の魅力を発信し続けていくことが重要。地域の診療所であるからこその魅力や対話、信頼関係があり、それが必要だと感じる人は必ず来てくれる。その期待に応えられるように日々成長していかなければ」と語る。

「同じ志を持った診療所を全国各地に増やしていくことで、その地域の医療全体を活性化させる起点となり、雇用や待遇の改善につながる。それをさまざまな診療科に拡大すれば、地域医療は変わり、日本の医療の在り方すら変えていけると思うので。そのためにまず私たちが“日本一の診療所”になります」と語る。開業から1年、福永理事長は着実な歩みを続けている。

医療法人仁永会ふくなが皮膚科理事長

福永真未

1985年、福井県出身。滋賀医科大学医学部医学科を卒業後、同大学皮膚科学講座に入局。地域基幹病院での勤務を経て、皮膚科専門医資格を取得。彦根市立病院では爪専門外来を開設。京都市内の皮膚科・美容皮膚科クリニック院長を歴任し、2022年1月に滋賀県彦根市にふくなが皮膚科を開業、同年11月に医療法人化し理事長に就任、現在に至る。

https://fkngderma.jp/