大胆な人材抜てきで
驚異的な急成長達成

株式会社エンパワー

買取専門店『買取大吉』を運営するエンパワー。増井俊介代表は2016年の社長就任直後から、大幅なコストカットや大胆な人材抜てき、マーケティング改革など、矢継ぎ早に施策を実行し、3年間で売り上げを7倍にする驚異的な成長を遂げた。業界ナンバーワンを目指す増井代表に成功の理由を聞いた。

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人間の本性を解き放ち、組織は変わる

増井代表は「かつては、買取専門店は誰がやっても儲かる時代でしたが、社長就任時は、群雄割拠の様相で、収益を出すことすら苦戦していました」と振り返る。経営幹部は前時代のままで、いわば“仲良しクラブ”だった。これでは会社が潰れてしまうと寒気が走ったという増井代表は「幹部や社員が全員辞めて自分一人になっても会社を生まれ変わらせる」と誓い、大改革に取り組んだ。

初めに取り組んだのは、当然コストカットだった。請求書の束を1枚ずつめくり、幹部用社用車やグリーン車の使用、接待交際費などムダは全てカット。幹部社員の賞与もなくした。次に人事制度。これまでの立場や社歴に関係なく、100%業績に基づいた評価制度とした。

これらの改革が矢継ぎ早に行われ、幹部社員たちには激震が走った。「よどんだ水は全て吐き出す」という増井代表に反発し、1年を待たずに幹部社員は1人を除いて全員が退職。本社の女性社員全員が辞めた。幹部がほとんど辞めてしまったので、増井代表は採用と人材の発掘を急いだ。全国を回って毎日コミュニケーションをとっていくうちに、増井代表はあることに気付いたという。

「経営者と話していると、『人は石垣、人は城』という武田信玄の言葉を、間違って解釈しているなと思う時がある。自分は天守閣にいる殿様で、組織は自分を守る城や石垣、堀であると考えているのではないか?という感覚です」と指摘する。

一方、社員たちと話していて、「軽々しくは口にしないが深奥にある本性」に気付いたといい、「それは時に卑しく、心の闇と言えるものかもしれない。分かりやすく言えば、“他者への妬み”、“自分を認めてほしいという功名心”、“もっとお金を儲けたいというような野心”」だという。

増井代表は、社員の“本性”を解き放ってやろうと考えた。「もっと露骨に、もっと貪欲に自分の本性と向き合って、それを仕事にぶつければ、多分50の能力を持った人は、70くらい発揮できる。そうすれば、実績や経験がなくても、成功する。本性に火をつければ魂が動くからだ。だから社長として祭り上げなくてもいい。おうかがいなど立てなくてもいい。ただ自分で仕事を決めて目標を決めたら、何が何でもやり遂げればいい」と新しい幹部社員に諭した。

現在のエンパワーの原動力となっているのはともに入社1年あまりで抜擢された2人の新しい取締役だという。一人は弱冠28歳の清水航輝取締役、もう一人は自らを「Mr.大吉」と言ってはばからない熱血漢41歳の鈴木修平取締役だ。まるで起業したばかりの創業者のように24時間仕事のことしか考えていないといい、増井代表は「仕事へのスタンスを教えれば、だいたいの人材は一端の経営者になる」と語る。

買取大吉の店舗は、直営店が約130に対して、フランチャイズ(FC)は約500。増井代表はその比率について、「本当はすべて直営店舗であれば、もっと利益額をたたき出せるだろうが、組織が大きくなり、ヒエラルキーが形成されるので、全店長を本性むき出しで仕事に突き進ませるのは難しい。社員を教育して本気にさせるより、本気で経営に挑戦しようという方に店舗を任せた方が断然スピーディだ」と解説する。

02

リユース業界ナンバーワン目指す

一般的に買取専門店のメインターゲットは50代以上で、新聞の折込チラシによる反応が高い傾向にあるが、中長期的に見れば、ウェブマーケティングに移行をうまく進めなければならないという。複数のメディアが相乗効果を生み出すために、それぞれの広告をブリッジさせるものが必要だとして、タレントのIKKOさんをCMキャラクターに起用し、ロゴも一新。これが功を奏して、来客数も顧客単価も大幅に伸びた。顧客層が50歳以上に大きく寄っている他社に比べ、買取大吉は30~60代以上の各世代に満遍なく広がっている。増井代表は「経営戦略とマーケティングは両輪。目先のKPIだけにとらわれないことこそが肝心」と語る。

新型コロナウイルスの感染が拡大したこの3年間で、売り上げは約7倍と急成長を遂げた。増井代表は「企業は人。言い古された言葉だが、身につまされる。ここ数年の業績は、ナンバーワンを必ず奪取するという目標を社員と誓い、またFC加盟店オーナーとも真剣に向き合い浸透させてきた結果」と胸を張る。

2023年は、ショッピングセンターを中心に直営出店を加速させ、直営店だけでなくFC加盟店の利益率を高めるために昨年立ち上げたB2Bオークション「大吉オークション」の規模を拡大。リユース業界ナンバーワンに向け、さらなる成長を目指している。

株式会社エンパワー増井俊介

増井俊介

1973年、大阪府出身。1998年、神戸学院大学卒業後、大手通信会社に入社。関連会社の立ち上げなどを経て、2016年、株式会社エンパワー代表取締役に就任。

http://www.en-power.jp