【大学特集】
「人一人ハ大切ナリ」良心教育の理念

同志社大学

1875年、新島襄が京都に創立した同志社英学校を起源とする同志社大学。同志社大学 植木朝子学長は「大学での学びが学生たちの視野を広げる」と語る。

01

創立150周年。さらに先の200年を見つめて。

同志社大学は、14学部・16研究科を有する総合大学で、創立者である新島襄が残した、「人一人ハ大切ナリ」という言葉を受け継ぎ、その理念に基づく「良心教育」を実践しています。規模の大きな大学でありながらも、教員や職員が学生に丁寧に向き合い、その言葉が深く根付いていることが感じられます。

 本学の卒業生ではない私が同志社大学に着任した際は、学生と教員のコミュニケーション密度の高さに驚きました。例えば、卒業論文の指導なども非常に丁寧で、学問の道に進む上で必要なサポートや環境が整っていると感じました。私の学生時代には考えられなかった光景で、本学の教育の質の高さに感銘を受けました。

2025年に創立150周年を迎え、この節目を記念し、大学としてもさまざまな事業を展開することを決定しました。本学の歴史を後世に正しく伝え、建学の精神と教育理念を現代に生かしていくことを目指しています。同時に、新島襄が語った、同志社教育の理想の実現には200年の歳月が必要という言葉を受け、学生・生徒・児童・園児、卒業生、教職員が協力し、創立200周年、さらにその先を見つめて、新たな歩みを強力に進めていきます。

これらの記念事業を中心とした施策により、過去・現在・未来を視野に入れ、同志社に関わる多くの関係者や地域社会、国内外のコミュニティに向けて、同志社の真価を広く発信する機会となることを期待しています。同時に、理解者を増やし、同志社の未来に寄与するたくさんの方々の参加を願っています。

02

エンパシーの要素を導入した教育

学長としての日々には困難も多いですが、教職員との連携により、共に課題に向き合えることに感謝しています。一緒に力を尽くしてくれる人たちの存在によって、苦難の時もかけがえのない財産になっています。また、通常は交流の機会がない方々との出会いや新たな学びの機会が増え、広い視野を得ることができました。

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」というブレイディ・みかこさんの著書には、エンパシーとシンパシーという言葉が登場します。いずれも「共感」と訳されるものの、内実は異なっています。「シンパシー(sympathy)」は他者と感情を共有し、相手の心情に同調・同情することを指し、「エンパシー(empathy)」は他者と自分を同一視せずに、相手の意志や心情をくむことを意味します。前者は努力せずとも自然に湧き上がってくる感情的なものですが、後者は他者への想像力を鍛える理性的で知的な作業と言えます。変化が大きく、価値観が多様化している現在、エンパシーを身に付けさせる教育の重要性が増していると感じています。

学問は自分の視野を広げていくプロセスだと考えます。これまで知らなかった知識や視点を得ることで、自分の当たり前が常に当たり前ではないことに気づくことができます。重要なことは、自分の価値観が絶対的でないことを理解し、その気づきを通じて成長することです。大学での学びが、学生たちの視野を広げ、新たな視点を持つ力を養っていくことを期待しています。

同志社大学学長

植木朝子

1967年生まれ。95年お茶の水女子大学大学院博士課程人間文化研究科比較文化学専攻単位取得退学。博士(人文科学)(お茶の水女子大学)。同大学助手などを経て、2005年同志社大学文学部国文学科助教授、07年同教授。文学部長・文学研究科長、副学長を歴任し、20年4月より現職。

https://www.doshisha.ac.jp/