働き方改革の実践で
運送業の未来を開く

株式会社 大松運輸

運送業といえば、労働時間が長く体力的にも厳しい力仕事というイメージで、ドライバー不足などの課題も上げられる。。そんな中、大松運輸の仲松秀樹代表取締役は、率先して働き方改革の実践やアスリート採用などで、積極的に若いドライバーを増やした。100人以上いる社員の平均年齢は35歳という若さで、業績アップにつなげている。

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社員の提案からアスリート採用を実施

大松運輸は、仲松代表の父が1972年に創業した。2代目社長の仲松代表は「運送業界には珍しく社員の平均年齢が低く、生き生きとフレッシュに働けるアットホームな雰囲気が特徴」というが、会社を継いだ当初は、長時間労働で休みも少なく、「こんな厳しい労働環境が続けば、社員は疲弊するばかり」と考え、社員の働き方改革に注力するようになった。「運送業というのは、社員それぞれが一人親方といったような感覚の会社が多く、当社もそんな体制で、社員は定着せず、若い世代は見向きもしてくれなかった。当たり前のことですが、きちんと組織として確立したいと思いました」という。

人材を確保するため、まずは積極的に新卒を採用した。仲松代表は「いかに新卒が入ってきたいと思えるような会社にするか、大きな挑戦でした。そのためにも、今の労働環境を変える必要がある。しっかりと休日が取れ、キャリアアップができる。そうした課題を一つずつクリアすることで、社員の満足度を高め、新卒採用につなげていきました」と語る。

新人ドライバーに向けたマンツーマンのトレーナー制度もその一つだ。「運送業、特にドライバーは一人で完結する仕事ではありますが、やっぱり基本は人と人。コミュニケーションを大事に、仲間意識を強く感じながら仕事をしてほしい。そういった考えから、トレーナー制度を実施し、社員の定着率も高まりました」という。また、サッカー選手としての競技経験を持つ社員からの提案がきっかけに、中小の運送会社では珍しいアスリート採用を導入した。「競技を続けたいけど、生きていくためには働かなくてはいけない。競技と仕事を両立させられる働き口が少ないという実感があったそうなんです。運送業はシフト制で、商品さえ時間厳守でしっかりと届けることができれば成り立つ仕事。こちらも若い働き手が欲しいので、うまくマッチングできるのではないかと考えました」と振り返る。

スケジュール管理はもちろん、トレーニングルームの設置や住宅家賃の補助といった競技に取り組みやすい環境を整えているほか、引退後のセカンドキャリア、将来設計までをサポート。現在では、陸上短距離でパリ五輪を目指すような選手も在籍しているという。

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建材配送では少ないエリア配送を採用

コロナ禍で社会のインフラを担う業界として、改めて注目を集めた運送業だが、仲松代表は「ドライバー不足の流れは、まだまだ続くのではないか」という。「運送会社の約8割がトラック10台以下の中小企業。その規模で積極的に新卒を採用するのは難しい。たまたま当社は100人規模になったので挑戦できましたが、業界全体として人材不足への施策を打ち出す時期ではないか」と指摘する。

同社の強みは創業当初から、建築現場への資材配送だ。積み重ねてきたノウハウ、技術、知識を使い、配送のみならず施行や内装工事まで請け負うなど事業の幅を広げている。「現在、神奈川県内に3カ所の拠点があり、依頼された建築資材を各拠点に集約させるというエリア配送も取り入れています。大手の運送業者では当たり前の方法ですが、建材配送で実施している会社は多くありません。効率的な配送が可能になるだけでなく、お客様にとってはコスト削減になる。1台当たりの単価も上がるので、社員へのボーナスや給料アップにもつながっています」と胸を張る。

働き方改革に加え、建材のエリア配送など先進的な取り組みで運送業界のイメージアップにも貢献している仲松代表は、「次の挑戦の足掛かりとして、19年には沖縄に社員を派遣し、今年こそは念願の沖縄に営業所を設立したい「両親が沖縄出身なので、貢献したいという思いもあります」と話す。さらに、「正直いろいろなところに手を広げ過ぎたという思いもあるので、まずはもう一度足元を固めたい。社員一人一人と向き合って、もっと生き生きと働いてもらえるにはどうしたらいいのか。それを常に考えています。運送会社として、キャリアアップを見える化したい。今年入社した新卒社員が、社長を目指せるような会社にしたいと思っています」と目標を語る。

仲松代表の座右の銘は「意志あるところに道は開ける」だ。先代が作り上げた会社の良さを残しつつ、新たに行動を起こすことで次の道を切り開いてきた仲松代表。今後も大きなチャレンジを続けていくことだろう。

株式会社 大松運輸代表取締役

仲松秀樹

1973年生まれ。東京都出身。生後すぐに沖縄・宮古島へ。動物関係の専門学校を卒業後、牧場などの仕事に携わる。その後、父親が興した株式会社大松運輸に入社するも一度退職。ペット商材の会社などへの転職を経て2006年に再び同社に戻り、代表取締役に就任。

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