未来を変える
細胞塊治療

クリニック東京虎ノ門COR

人工多能性幹細胞(iPS細胞)の開発などで注目を浴びた再生医療だが、身近な医療の選択肢となるには多くのハードルが残っている。細胞塊治療の研究と臨床に長年携わってきたクリニック東京虎ノ門CORの林衆治院長に、再生医療の現状と課題、可能性を聞いた。

01

臓器移植に代わる医療として研究

名古屋の医療法人財団檜扇会クリニックちくさヒルズ(2012年開院)に続き、東京に2022年7月に開院したクリニック東京虎ノ門COR。クリニック沿道の緑を望む明るい院内には、再生医療により関節痛・腰痛、肝臓病、自己免疫疾患、脳梗塞の後遺症などを治癒したいと、遠方からも多くの患者が訪れている。

林院長は約25年前に再生医療の研究を始めた。当時、肝臓移植の専門医として多忙な日々を送っていた林院長は「日本は臓器移植のドナー数が圧倒的に不足しているため、臓器移植に代わる治療はないか」と模索していた。米国留学中に、欧米などで再生医療、幹細胞治療の臨床研究が始まったことを知り、「大いに可能性を感じて研究をスタートしました」と語る。

幹細胞治療は、自己免疫疾患、脳梗塞などの病気やけが、関節の疾患などで障害を抱えた組織とその機能を、幹細胞が持つ「再生する力」を利用して回復させる治療法だ。人工多能性幹細胞(iPS細胞)は自己以外の細胞を使用するため、免疫を抑制し、発がん性の問題を解決する必要がある。また、現状では個人では負担しきれないほどの費用の発生が想定されることから、いまだ治療として一般に提供されていない。一方、脂肪由来幹細胞などの体性幹細胞治療は自己の幹細胞を培養するため、免疫その他の問題はほぼないとされている。

02

工学分野との連携に注力

幹細胞治療は2013年に再生医療法が制定されるなど法整備も進み、自由診療として一般に提供されているが、いまだに広く普及するには至っていないのが現状だ。そんな中、林院長は再生医療の安全性と有効性を高めるための研究を続けてきた。クリニック開業前、名古屋大学医学系研究科で再生医療の研究をしていた林院長は、幹細胞を塊として治療に用いると有効性が大幅に増すことを発見した。しかし、そのためには培養効率を飛躍的に上げるデバイスの開発が必要不可欠だと感じ、工学分野との連携に着目し、東京大学工学部と連携してデバイスの開発を手掛けた。

「当初、医工連携をスタートさせるには大きなハードルがありました。医学と工学では使用する専門用語も違いますし、お互いのニーズに大きな相違があったためです。そのための擦り合わせには多くの時間と労力を費やしました」と振り返る。その結果、細胞を三次元で培養するマイクロデバイスの開発に成功した。特許を取り商品化し、幹細胞塊培養の効率化に寄与している。

林院長は、教授退任後は、自ら設立した㈶グローバルヘルスケア財団附属研究所で研究を続けている。そして、その成果を患者に直接届けるために医療法人財団檜扇会クリニック東京虎ノ門CORを開業した。研究と臨床を今なお継続している林院長は「臨床医として再生医療の研究開発に携わってきたため、患者にとってこの研究がどのようなメリットがあるのか、また患者が一番何を求めているのか、そのニーズを知ることが研究する上で何よりも大切だと考えてきました」といい、誰よりも患者の声に耳を傾け、対話を大事にしているという。

「再生医療は、さまざまな研究が行われ、今まさに成果が世に出始めています。再生医療に携わる医師の一人として、これからも研究と臨床を並行して行っていく予定です。現在はまだ自由診療で行われている再生医療ですが、さらに進化し一般の方々に周知されれば、より多くの患者様の笑顔を見られると思います。再生医療の有用性を多くの方に知ってもらい、患者の未来に貢献できる医療を提供していきたい」と力を込める。

クリニック東京虎ノ門COR 院長

林衆治

名古屋大学医学部を卒業。米国ピッツバーグ大学外科に留学。2005年から2010年まで名古屋大学大学院医学系研究科にて先端医療バイオロボティクス学講座の教授を務めた。現在、㈶グローバルヘルスケア財団理事長、医療法人財団檜扇会理事長、クリニック東京虎ノ門院長。

https://clinic-toranomon-cor.com/