コロナ即応で話題に
タイで食パンが成功

株式会社ビースリー

タイ・バンコクで日本スタイルの生食パンが人気となっているという。ブームの火付け役となったのは、東京・五反田に本社を構えるビースリーが手掛けるベーカリーカフェだった。元々ウェブマーケティング事業で起業した同社が、コロナ禍での課題にスピーディーに対応し、タイでの食品事業に成功した秘訣とは……。

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ウェブマーケティングから食品事業で海外進出

ビースリーは、サービスや通信メディアの運営など、ウェブマーケティングの分野で事業を拡大してきたが、田和充久代表取締役は、新規事業として「海外で展開できるものは何か」と考えた。「軸としていた通信関連のコンサルということももちろん考えましたが、特定の分野に執着するよりも、新たなことを楽しくやりたいなと思いました。海外の方も日本の“食”には興味があるだろうと思い付いたことが始まりでした」とタイでの食品事業に乗り出す。

未経験の飲食店経営で、しかも現地に移住せず、基本はリモートといったスタートに周囲からは心配の声も多かったが2016年、海外1号店としてジンギスカン屋をにオープンした。好評を得たが、「ジンギスカンは好きだという人も多いが、毎日食べるものでもない」ということに気付き、田和代表は「日常的に愛されるものを手がけたい」と、2019年4月に2号店となるベーカリーカフェをオープンし。

田和代表は「パン屋は仕込みから販売まで、とにかく労働時間が長い。それを解消するべく、日本で作った冷凍生地を空輸して、現地で焼くというビジネスモデルを作りました。補助金などをうまく使い、価格も日本の1.2倍ほどに抑えることができました」と語る。

日本スタイルのパンがリーズナブルに食べられるとあって、現地での評判も上々だったが、オープンから約1年後、世界中がコロナ禍に見舞われた。「ちょうどバンコクが明日からロックダウンする、というときに現地に行っていたんです。店内飲食は全面禁止。テイクアウトとデリバリーのみ可能だということになり、これはまずいと思い、急いで中古のバイクを数台購入して、ジンギスカン屋は休業にし、スタッフは全員ベーカリーカフェに移して、翌日からテイクアウトとデリバリーをスタートさせました」と振り返る。

当時、デリバリーに即対応できる飲食店が少なかったうえ、タイでは飲食店の告知はフリーペーパーが中心だった中、SNSを使って即日告知できたた。さらに、PM2.5対策で用意していたマスクも役立ったという。「デリバリー1回に付きマスクを1枚プレゼントすることにしたら、手にした方が続々とInstagramにアップしてくれたんです。それを見た日本人のお花屋さんが『僕らも花を配ります』と言い始めたので、僕から連絡して一緒にやることにしました。気持ちが停滞するなかで少しでも喜んでもらいたいという気持ちもあり、パンのおまけにマスクとお花をつけたら、SNSでの反響も大きく、デリバリーの注文もたくさんいただくようになりました」と語る。

その後も飲食店の休業で生き場を失ったホタテやマンゴー、仕事がなくなってしまったカルチャースクールの講師が作ったクッキーなどを、パンのデリバリーと組み合わせて販売した。コロナ禍での課題に素早く対応していくことが話題となった。中でも、生食パンは最大で3カ月待ちの人気商品になり、その生食パンだけの専門店が2021年2月にオープンした。入国時の隔離期間、ホテルに届けるサービスを行ったことなども現地で話題となった。

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日本でのスイーツ事業は長く続くものを

そんなタイでの経験を経て、2021年、日本でスイーツ事業を立ち上げた。第1弾にガトーショコラ、そして第2弾が熟成バスクチーズケーキ。いずれもグルテンフリーなど、こだわりを詰め込んで開発した商品だ。田和代表は「クラウドファンディングで販売したのですが、僕らは有名店ではないので、目標は30万くらいといわれていたんですが、約1カ月で813万円が集まり、クラウドファンディング大手のCAMPFIREで飲食店フード部門200件中1位で終わることができ、かなり驚かれました」と手応えを語る。

食品を専門に扱ってきたわけではないが、国内外で食品事業が高い評価を得たのには、元々手がけていた通信関連コンサルティングの経験も生きているという。「熟成バスクチーズケーキは、その名の通り“熟成”の部分がポイントで、熟成前後で味が変わるため、成分分析にかけたところ、うまみ成分と言われるグルタミンが1.8倍になっていた。クラウドファンディングで販売する際には、そういったデータなども全て記載しました。“おいしい”は感じるものですが、その違いが分かると面白いじゃないですか。通信コンサルでSEO対策をやってきたので、タイでSNSを使って話題を作ったように、どのようにお客様が情報を探しているか、どんな商品が好まれるのかを研究して対策するのは通常の仕事なので楽しんでやれています。今までスイーツをやっていなかったことでの非常識や、スイーツ業界での常識をうまく融合して、一つの商品を突き詰めることで数多くの商品を扱うケーキ専門店様と差別化をして、ワクワクする商品を今後も開発をしていきたいと思います」という。

田和代表は「はやるだけではなく、長く続けられるようなしっかりとした商品を新しく作りたい。ちょっと違った面白いサービスを提供したいと考えています」と展望を語る。今後も、消費者がより楽しく、豊かになるサービスを提供してくれることだろう。

株式会社ビースリー代表取締役

田和充久

1970年、静岡県浜松市出身。多摩大学を卒業後、人材サービスを手がける株式会社クイックに入社。その後、エキサイト株式会社を経て、2007年に株式会社ビースリーを設立、代表取締役に就任。通信関連のコンサルティング事業を軸に、2017年12月、タイで食品事業を開始。NPO法人格安SIMと格安モバイルWiFiの正しい選択方法の普及協会でも代表理事を務める。

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