体験と成長を得る
新たな“遊び場”を

株式会社アネビー

住友不動産ショッピングシティ・有明ガーデン4階にある「キッズ有明ガーデン」は、2022年12月のリニューアル以降、新たな“遊び場”施設としてファミリー層から高い支持を得ている。リニューアル時にプランニングを手がけた“遊び場作り”のプロ、株式会社アネビーの弘永元氏と住友不動産商業マネジメント株式会社の坂巻裕太氏に話を聞いた。

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リスクとベネフィットを両立

アネビーで、これまで数多くの幼稚園・保育園の園庭や保育室・商業施設など遊び場のプランニングを手がけてきた、国際遊び場検査士機構 精密点検検査士の弘永氏は、今回のキッズ有明ガーデンのプランニングでは、リスクとベネフィットの両立に注力したという。「園庭でも遊び場でも同じですが、その環境作りの目的と遊びにおけるベネフィットを尊重しながら、子どもが思いつく行動から生まれるリスクを考える必要がある。たとえリスクが低くても、利用者のベネフィットがなければ意味がない。もしくはベネフィットが高かったらリスクが許容できるかもしれない。そういった視線で見たときに、リニューアル前の施設は特に1歳以上の子どもに対してベネフィットが少ないのではないかと指摘しました」と語る。

リニューアル前は0~6歳までが対象で、床にふかふかのクッションマットを敷き詰めているだけのような空間だったが、弘永氏は「それだけだと子どもたちが満足せず、空間として提供している以外の動きで自分の欲求を満たそうとしてしまう。走り回ったり、へたしたらけんかしたり。人間の本能に近い動きをかなえられる遊具がない。想定していないけがのリスクも高まり、結果的に管理者や保護者の方の最大限な幸福にはなりにくいと考えました」という。

坂巻氏は、弘永氏の指摘で初めてキッズスペースにおけるベネフィットという概念を認識したといい、「それぞれの年齢に合わせた遊具で遊べるという満足はもちろんですが、商業施設であるからこそ何年も通い続けてくれる子どもがいて、その成長に合わせた使われ方をする場所にする必要もある。単純に遊ぶだけではなく、子どもたちが『自分でこれできるかな』とチャレンジする要素を加えることで、自分の身体能力の上限を知り、それが日常生活のリスク管理につながる。満足かつ成長できるベネフィットを提供したいという思いが強くなりました」と話す。

プランニング前に、弘永氏は有明エリアを調査して、心身ともに“体験”が少なめの子どもたちが多いと感じたという。さらに、有明ガーデン全体を漂うグリーンの雰囲気や、壁面緑地などの自然を大切にしたコンセプトを考慮して、森的な要素を加えたいと考えた。ツリーハウスのようなシンボルリリックな大型複合遊具を軸に、木の上の秘密基地のようなバルコニーや、クライミングに揺れる縄ばしご、空中ネット床など冒険心をくすぐる遊具を配置した。「あそびの森」と名付けられた遊び場は五つにエリアに分かれており、「アリッシーの池」「ふくろうの森」「兄弟アジト」などネーミングにもこだわった。弘永氏は「森の中には必ず生き物がいる。子どもは、遊びながらだと空想的なものもシンクロしてつながりますから、『ネーミング+仕掛け+遊び』で、身体的な遊びだけでなく、心も豊かに育っていってほしいという思いを込めました」と説明する。

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子どもの遊び場が保護者の交流の場に

リニューアル後、キッズ有明ガーデンで遊ぶ子どもたちの様子を見た坂巻氏は、狙い通りに年齢ごとのすみ分けができていて、同時にもう一つのベネフィットである成長という部分でも手ごたえを感じたという。利用者数も増加し、施設自体の集客にもつながった。坂巻氏は「午前中からでキッズ有明ガーデンに来て、子どもたちを遊ばせて、館内でご飯を食べて散歩する、といったような流れができたのはうれしい。子どもたちを遊ばせながら、保護者同士が会話している風景もよく見るようになりました」といいに対し、弘永氏も「リニューアル前のヒアリングで、キッズ有明ガーデンを中心に地域の子育て支援も目指しているということだったので、子どもたちが元気に心身強く遊ぶだけではなく、保護者同士でも交流が生まれるように、という部分もプランニングでは大事に考えました」と話す。

2000年以降に開発が進んだこともあり、公園などが少ない有明エリアだが、坂巻氏は「地域柄、子育て親同士のつながりも求められている。キッズ有明ガーデンは遊ぶ、学ぶだけでなく親同士が接点を持つという機能も果たしている」と語り、「今後はキッズフロアや施設全体で妊婦から7歳以降の子どもたち、その保護者のためのベネフィットを提供していきたい」という。弘永氏も「今は未就学児の遊び場提供が事業の軸ですが、就学後の子どもたちの遊ぶ環境を充実させたい。それは、ベネフィットをうまく追及して、リスク管理をすれば商業的にも絶対にマイナスになることはない。保護者にとっても有益な場所になる」と力を込めた。

株式会社アネビー国際遊び場検査士機構 精密点検検査士

弘永元

米ニューヨーク州立大学FIT卒業。内装設計施工会社で建築士兼ニューヨーク市建設庁エクスペディター(納期管理者)として勤務。現在株式会社アネビーで開発部として勤務しながら、2017年に国際遊び場検査士機構(RPII)精密点検検査士の資格を習得。

https://www.aneby.co.jp/